Dr.純子のメディカルサロン

頑張る文化とインフルエンザ
~「ちょっと変だ」と思ったら受診とマスク~ 第28回

 インフルエンザが猛威を振るっています。今シーズンのこれまでの患者数は推定328万人。13日からの1週間に医療機関を受診した患者は163万人で、警報レベルに達しています。

 ここまで感染が広がるのは、その感染力の強さはもちろんですが、私たちとしては、感染を広げないための対策を再確認する必要があるでしょう。そこで思い出すことがあります。

インフルエンザなら、頑張ってはいけません(写真はイメージです)


 ◇発症1日前から感染力

 数年前のこと。ある一部上場企業の管理職50代男性が38度の熱と頭痛で受診。検査でインフルエンザと診断されたのに、「薬を飲めば大丈夫なので、後ちょっとだけやらないといけない仕事が…」と言って、職場に戻ろうとしたのです。

 これには、みんなびっくり。もちろん、「それはだめ」ということで、休んでもらいました。昭和の時代でもなく、また知識も十分なはずなのに、休もうとしない傾向は、「頑張って無理しないと」という心理に縛られているからではないでしょうか。

 インフルエンザの迅速診断が可能になり、即、休むように指示されることで、感染拡大が避けられるようになりました。ですが、「熱など、ものともせず頑張るのが偉い」という心理は根強く残っていて、この心理が感染拡大の背景になることが推察されます。

 というのも、インフルエンザは潜伏期間が1~2日と短い一方、発症する1日前くらいから他人への感染力があるといわれています。また、発症しても、あまり熱が出ない場合もあり、「ちょっと変だな」と思って、くしゃみをしながら無理して出勤し、仕事をしているような場合は、感染を拡大するケースがあると思われます。

 前述のように、頑張って休まないような人や、体調が悪いと感じても、受診もせず、検査も受けない場合は、インフルエンザの診断が遅れ、治療が遅れることで、周囲への感染を拡大してしまうことになります。

 「ちょっといつもと違う」と感じたら受診して、体調が悪いとき、くしゃみやせきが出始めたときは、マスクなどをして飛沫(ひまつ)を飛ばさないという配慮が必要でしょう。とにかく「ちょっと変だ」というときは受診とマスクということを覚えていただきたいと思います。

 ◇感染経路を断つ工夫を

 インフルエンザ感染の経路は、主に三つです。ご存知の通り、一つは飛沫感染。感染している人のせきやくしゃみに含まれるウイルスによるもので、これが最大の感染源です。1.5メートル以内は感染しやすいので、人に感染させないように、マスクをすることが大事になります。

 第2に、数はそう多くないものの、接触感染もあります。くしゃみを押さえた手にウイルスが着いていて、その手で他の人が触れるパソコンのマウスや電車のつり革などに触れた場合、それに触った人に感染します。

 第3には、ウイルスが生存しやすい乾燥した室内で、閉め切った、換気の悪い環境にいる場合に感染することもあります。

 あるスーパーマーケットの事業所ではこの時期、全員がマスクをして仕事をし、部屋の換気を24時間して湿度計と温度計を置いて環境管理を行っていました。配達の人が外から事業所に戻るときには、手を消毒するような対策もしていました。

 職場でも、家庭でも、持ち込まない、感染を広げない工夫は大事です。

(文 海原純子)


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