女性アスリート健康支援委員会 思春期の運動性無月経を考える
健康むしばむ競争はもうそろそろ改める時期
思春期女子の将来守れ、五輪メダリスト指導者の提言
◇中高生は楽しく、大人は自己決定で世界へ
小学生は、いろんなスポーツを楽しんでやり、その中で自分に合うものを見つけるとよい。中学生や高校生には「中長距離を走りたいともし考えるなら、一番頑張っていい時期はずっと先だから、今は無理せず楽しんでやろう」「安定して月経が来ている子たちは、月経が止まらない範囲で一生懸命トレーニングをしよう」と言いたい。
小中学生の駅伝は少なくとも全国大会はやめたほうがいい。競争が過度になるからだ。米国ではスポーツの多くは、高校くらいまで全国大会がない。競争を適正な範囲に収めていくのが教育ではないか。
心身共に大人になり、指導者ではなく選手本人で決めて、人生を懸けて勝負するなら「軽量化戦略を取るな」とは言えない。20歳以降、世界で戦う選手は、勝負する時にはやはり、体脂肪率を10%以下にしぼり込まざるを得ないだろう。体重階級制のボクサーや柔道選手のように、陸上選手もレースに合わせて体重・体脂肪をしぼり、レース後にオフを取るとよい。今は、結果を求められる大会が多過ぎ、常に体をしぼり込む羽目になるが、軽量化は半年に1回か1年に1回が望ましい。
◇女性だからと勝負させないのもおかしい
中学や高校の部活では、選手が意欲満々でもあえて「熱くなるまで鉄は打たない方がいい」という状況がある。だが、思春期を乗り切って体を完成させた20歳以降は、もう十分、鉄は熱くなっているので、男性と同じように自らの決定で、トップレベルの勝負に挑戦させればよい。(聞き手=水口郁雄)
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山内 武氏(やまうち・たけし) 1962年生まれ。筑波大大学院修了。スポーツトレーニングの専門家で、大阪学院大赴任後、女子駅伝チームを立ち上げ、陸上競技部監督、総監督として高橋尚子選手(当時)らを指導する。現在、大阪学院大教授(経済学部長)。ランニング学会副会長。56歳。
◇勝利至上の「軽量化戦略」やめて 中高生選手の無理な減量、尾を引く影響(シンポジウム報告・上)
◇アスリートに多い摂食障害 女子選手の健康問題、予防と早めの対応を(シンポジウム報告・下)
(2019/02/02 07:00)