女性アスリート健康支援委員会 思春期の運動性無月経を考える
健康むしばむ競争はもうそろそろ改める時期
思春期女子の将来守れ、五輪メダリスト指導者の提言
◇鉄剤問題の根本にあるのは食事制限
女子選手の健康被害を理解しながら、「そんなこと言っても、体を軽くしないと勝てない」と考えている部活の指導者に対しては「その年代で今勝つために、選手の将来を捨てていませんか」と言いたい。「オリンピックで活躍する芽を摘んでいませんか」と訴えかけたい。
次回の全国高校駅伝で日本陸連は、レース前に出場校から血液検査結果の提出を求めるそうだ。鉄剤注射を抑止するためにヘモグロビンやフェリチンの数値を調べるのだろうが、せっかくなら栄養状態やエストロゲンの状態も、できれば産婦人科医らに依頼して、調べてはどうか。陸連が実態を把握しないと、実効性のある規制はできない。
◇ランニングのイメージと価値を守れ
大学で高橋尚子を指導した当時も、軽量化の弊害は分かり始めていた。2002年に出した「努力の天才―高橋尚子の基礎トレーニング」という本でもその問題に触れたが、当時より状況は悪化している。女子マラソンは弱くなったといわれるが、その根本原因は中学・高校時代にある。
無月経などの健康被害は、体操・新体操やフィギュアスケートのような審美系や、体重階級制の競技の選手たちにも共通の問題だ。東京五輪を前に、これだけスポーツが盛り上がっている今、以前は放置されていた体罰やパワハラなども、世の中で問題になっている。一昔前の価値観、自己犠牲を伴う文化は徐々に変わってきた。その中で女性スポーツをどうやって強くするか、知恵が問われている時代だ。
(2019/02/02 07:00)