女性アスリート健康支援委員会 思春期の運動性無月経を考える

健康むしばむ競争はもうそろそろ改める時期
思春期女子の将来守れ、五輪メダリスト指導者の提言

 「あの高橋尚子は大学時代の体脂肪率が12.5~14.5%。無理なく体を成熟させたから、20代後半で世界と戦えた。思春期に無理な減量をした女子選手は、健康を損なって20歳以降、伸び悩んでしまうことが多く、世界で通用しません」

 
 インタビューに応じる山内武大阪学院大教授
 日本産科婦人科学会や日本スポーツ協会などがつくる「女性アスリート健康支援委員会」が主催し、去る12月に東京で開いたシンポジウム「思春期の運動性無月経を考える」。特別講演した山内武大阪学院大教授は、大学で指導したシドニー五輪女子マラソン金メダリストを引き合いに出しながら、陸上中長距離で中高生選手にも広がる「軽量化戦略」を批判し、スポーツ指導のあり方を見直すよう訴えた。

 過度に体重・体脂肪を絞る「軽量化戦略」は、女子スポーツ選手の無月経や摂食障害といった健康被害の温床として、今、改めて問題になっている。ランニング学会副会長でもある山内氏に、その問題意識を詳しく聞いた。

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 中学や高校の部活には、運動性無月経にとどまらず、競技者の燃え尽きや故障、指導者の体罰、パワハラ、セクハラといったさまざまな問題がある。それらの問題全体の背景に、過度な競争がある。高校の野球に代表されるように、興行の論理が強く、教育的配慮よりも優先している競技が存在する。

 もうそろそろ、そんな構造を変えないといけないのではないか。

 ◇無月経の高校生は治療を優先すべきだ

 軽量化戦略は短期的には即効性があり、痩せると確かに速い。だが、健康への悪影響を知らなかったり、知っていて目をつむったりしている指導者がいる。

 金メダルを取ったシドニー五輪の2年前の陸上国際グランプリ女子5000メートル決勝で走る高橋尚子選手=1998年5月、大阪・長居陸上競技場
 体脂肪率が15%を切ると月経が来ない女性が多くなり、10%を切るとほとんど月経が来なくなると言われるが、高校生でも10%以下の選手はかなりいる。無月経になると、女性ホルモンのエストロゲンの分泌が抑えられて骨密度が低下し、摂食障害の危険もある。長期的にはあまりにもリスクの高い戦略だ。

 新聞報道によると、先の全国高校駅伝に出場した女子選手の体格は平均で身長158.1センチ、体重44.8キロ。体格指数(BMI)18.5未満だと一般的には「低体重」「やせ気味」とされるが、選手たちの平均値から計算したBMIは17.9。あくまで平均値だから、17.5を下回って体のエネルギー不足が疑われ、無月経になっている選手もかなりいるはずだ。

 無月経なら競技よりも治療を優先させるのが本来、教育としての筋だ。女性アスリート健康支援委員会も、15歳以上で無月経などの問題を抱える選手にはまず、産婦人科医に相談するよう勧めている。だが、現実問題としては、受診していない選手がほとんどだ。

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