女性アスリート健康支援委員会 思春期の運動性無月経を考える

勝利至上の「軽量化戦略」やめて
中高生選手の無理な減量、尾を引く影響

 女性の無月経の原因はさまざまだが、スポーツに参加する女子選手の場合、大半は激しい運動や無理な減量による「利用可能エネルギー不足」だ。十代から無月経が長期間続くと、骨がもろくなって疲労骨折のリスクを高め、将来の不妊にもつながりかねない。日本産科婦人科学会や日本スポーツ協会などでつくる「女性アスリート健康支援委員会」(川原貴会長)が去る12月、東京都内で開いたシンポジウム「思春期の運動性無月経を考える」では、この問題に詳しい専門家たちから、無理な減量などに警鐘を鳴らす発言が相次いだ。

 ◇過剰な競争で伸び悩む選手

 特別講演した山内武・大阪学院大教授
 シンポジウムの前半、特別講演したのは大阪学院大の山内武教授。シドニー五輪で金メダルを取った高橋尚子選手を、その大学時代に指導したスポーツトレーニングの専門家だ。

 主に陸上中・長距離の問題を取り上げ、「中学や高校の部活では、さまざまな問題が生じている」と切り出し、競技者のバーンアウト(燃え尽き症候群)や故障、指導者の体罰・セクハラ・パワハラなどを挙げながら「その年代での勝利を目指した過剰な競争が部活をむしばんでいる」と問題提起した。

 運動性無月経を招く温床として批判したのが「軽量化戦略」だ。山内教授によると、長距離走の選手の記録を左右するのは、最大酸素摂取量を指標とする有酸素性パワーとランニング効率で、とりわけ有酸素性パワーの影響が大きい。車に例えるとエンジンの排気量に相当し、車体の重量(選手の体重)が軽いほど記録向上が期待できる。現場では選手の「軽量化」を目指し、「走り込みと徹底した食事管理で体重をしぼり、体脂肪の少ない引き締まった体形をつくり上げる指導を行っている場合が多い」という。

 ヨーコ・ゼッターランド日本スポーツ協会常務理事(左)と専門家3人による総合討論
 例えば、体重50キロでキロ当たりの毎分の最大酸素摂取量が60ミリリットルの高校生ランナーが都道府県レベルの選手だとすると、短期間に5キロ減量した場合はインターハイレベルの同66・6ミリリットル、10キロ減量した場合は一流選手レベルの同75ミリリットルという数値になる計算だという。

 中高生段階からの無理な減量は、女性アスリートの三主徴(利用可能エネルギー不足、無月経、骨粗しょう症)と呼ばれる健康問題はもちろん、摂食障害などを招く恐れもある。山内教授は「短期間に劇的に速くなることがあっても、20歳以降、大きく伸び悩んでしまうことが多い」と指摘した。

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