「医」の最前線 AIに活路、横須賀共済病院の「今」

〔第5回〕リーダーの在り方
職員が自立して働く組織へ

 人工知能(AI)の導入で注目を集めている横須賀共済病院はかつて、急患の依頼がきても待たせたあげく断るなど、温かみに欠ける対応で地元の評判が悪化した時期がある。1年半ぶりに横須賀共済病院に戻った長堀薫院長は、自身が不在の間に病院が変わってしまったことにショックを受けた。トップが常に引っ張っていくだけでは、スタッフが自立できない。強力なリーダーシップに限界を感じた長堀院長はリーダーとしての在り方を一から学ぶことに活路を見いだした。

MBAセミナーで経営の基本をコーチングでリーダーとしてのコミュニケーションの方法を学んだ

 ◇自発的な行動を促す

 「常にトップが目を光らせていないと問題が起きる組織では、厳しいなと気づきました。自分たちが自立して行動する組織にしなければ」。そう痛感した長堀院長は、経営について一から学ぶことにした。

 まず、横須賀市が民間企業と共同で行っていたMBAコースに半年間、月2回のペースで通うことにした。長堀院長と同期で集まったのは、中小企業の二代目社長やベンチャー企業の社長ら30人ほど。「丸1日缶詰めになって勉強しました。毎回、予習して密度高く学んだせいか、最後には病院に限らず、一般の会社でも経営できるとお墨付きをもらえました」

 さらに、ある講演会でマネジメントに重要なスキルとして、企業のトップをはじめさまざまな分野の人に活用されているコーチングについて知る機会を得た。「コーチングとは、自発的行動を促進するコミュニケーションのスキルだと聞いて、これからのうちの病院に必要なものだと感じました」

 主に電話でプロのコーチからレッスンを受けるほか、自分と関係のある仕事上の相手(ステイクホルダー)を数名選び、コーチングのパートナーとして参加してもらう。組織の中で課題を解決していくために、どうすればよいのか、ステイクホルダーに定量的で達成可能な目標を設定してもらい、自分で方法を考えてもらって解決に導いていく。

不都合な真実

 ◇看護部長に促され

 最初にレッスンを受けた看護部長から、「ぜひ院長も受けたほうがよい」と促され、自ら受けることに。ステイクホルダーとして、院内の職員5人と近隣の公立病院の院長3人を選んだ。

 プログラムの最初に、ふだん仕事で接している医師やスタッフ40人に院長のリーダーシップについて率直な意見を無記名で書いてもらった。「何を書かれるか怖い気持ちもありましたが、興味のほうが強かった」と長堀院長。

 すると、「前例にこだわらず新しいやり方を取り入れる」「具体的な目標を設定している」などプラスの評価もあった一方で、「相談しにくい」「部下とのコミュニケーションが円滑でない」「まとまって話す時間を設けていない」「自己管理不良」など、耳の痛い意見も寄せられた。

 「結果はおおかた予想通りでした。弱い自分は見せないで最速で結果を出すという、まあ痩せ我慢が習い性というか、スタイルなので、自分を評価したらこんなイメージだろうと。ただ、話をもうちょっとは聞いてるんじゃないかとか、思う部分もありましたけれど…」と長堀院長は苦笑いする。

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