こちら診察室 知ってる?総合診療科

第4回 「原因不明の症状」を診る
専門医と異なるアプローチ ~総合診療医の出番です~

 ◇漢方も選択肢 

 さらに、(1)必要ならばメンタルヘルス科など精神科領域に紹介する(2)経過観察していく(3)抗不安薬などを処方する―といったケースもあります。このような取り組みの中で、症状の改善に向けて試してみる方法の一つに漢方があります。 

表1

表1

 実際、器質的原因が分からない「めまい」に対して漢方治療が効果を発揮することが多く、総合診療医には漢方を使用する医師が比較的多いと思われます。総合診療科における漢方医学の役割については別途紹介します。 

 総合診療医は、臓器別専門医では診療が難しい、特定の臓器が原因か分からないMUSの疾患を診ることがしばしばあります。この理由としては、総合診療医を特徴づける「プライマリ・ケアの五つの理念」を考えると分かりやすいかもしれません(表1)。 

 ◇一緒に考える姿勢 

 プライマリ・ケアは最初に地域の人々が接するケア、つまり近接的ケアを指しています。それゆえに、地域住民の多くのニーズに応えられるように、どのような問題にも包括的に対応するケアを提供しなくてはなりません。 

 そのためには地域住民との協調性も重要ですし、医療スタッフや専門医との協調も必要になります。

 これらの理念を掲げている医療者がMUSのような患者に対して、自分の領域の疾患の患者ではないと言えるはずがありません。したがって、総合診療科ではMUS患者を診療することが多くなるわけです。 

平山陽示教授

平山陽示教授

 ただ総合診療医はスーパーマンではありませんから、何でも治せるわけではないのです。それでも患者に寄り添ってどうしたら良いのかを一緒に考える姿勢ができている可能性が高いと言えるかもしれません。(東京医科大学臨床教授 平山陽示)

平山陽示氏(ひらやま・ようじ)
1984年東京医科大学卒。88年米国ミシシッピー州立大学生理学教室留学。東京医大第2内科講師、准教授など経て2012年臨床教授。11年東京医大病院総合診療科科長、12年から20年まで卒後臨床研修センター長兼任。2000年から禁煙外来を担当している。循環器専門医、プライマリ・ケア認定医・指導医、禁煙専門医、産業医。

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