こちら診察室 知ってる?総合診療科

第4回 「原因不明の症状」を診る
専門医と異なるアプローチ ~総合診療医の出番です~

 総合診療医は、症状や患者の状態から、原因となるさまざまな疾患を鑑別して、専門の診療科に引き継ぐ。こう説明してきましたが、中にはうまくいかないこともあります。実際、他の診療所や病院から大学病院の総合診療科に紹介されて受診しても、診断がつかず症状に悩まされ続けている例が相当数あります。「原因不明の症状(MUS=Medically unexplainded symptom)」もその一つです。 

図1

 ◇疾患が見つからない 

 MUSは「(現在の)医学的に説明できない症状」という意味で、症状が継続的に定まっている場合も、定まっていない場合もあります。 

 実際の事例では「めまい」や「咽頭の違和感」「動悸(どうき)」「しびれ」「全身倦怠(けんたい)感」など訴える症状が決まっているケースが少なくありませんが、それでも各種検査や臓器別専門医の診察で異常が認められず、疾患が見つけられない場合を指します。 

 米国の研究データでは一般外来診療において、身体疾患を持つ患者が40~70%、精神疾患の患者が20~39%、MUSの患者が25%と言われます(図1)。わが国での詳細なデータはありませんが、ほぼ同様であろうと考えられています。 

臓器別専門医に「異常なし」と告げられ、悩む患者

 ◇診療中止の理由なし 

 このようなMUSの患者に対して臓器別専門医は「あなたは○○ではありません。例えば循環器専門医なら『心臓』の病気ではありません」と告げて診療を終了する場合が多々あります。 

 しかし、総合診療医は臓器別専門医ではないので、患者の症状に付き合っていく場面が多く、原因疾患は見つからないけれども困っている症状に対しての対応を患者と一緒に考えていきます。 

 つまり、臓器別専門医が「自分の専門領域の疾患ではない」という理由で診療を中止できたとしても、総合診療医は特定の臓器疾患の専門医ではないので、診療中止の理由がありません。 

 例えば「胸が痛い」と言う症状に悩まされた患者が、循環器内科で「心臓は悪くない」と言われ、次に呼吸器内科で「肺に病気はない」と言われ、整形外科でも「骨や筋肉に異常はない」と言われたとします。それでも痛みが無くならない場合に総合診療科を受診することがしばしばあるのです。

 ◇日常生活を普通に 

 このような患者が、消化器疾患の逆流性食道炎だったケースもありますが、「特に疾患は見つからない」という場合も多々ありますから、総合診療科がMUS患者を診察する割合が多くなります。 

 MUSの患者に対しては、まず生命に関わるような疾患の確率が低いことを伝えて安心してもらいます。 

 その上で、炎症や腫瘍などの器質的な疾患が存在する可能性も低いが、あなたのように悩んでいる患者は意外と多いということを説明し、治療の目的を「症状を完全に取り除く」ことから「多少症状があっても日常生活を普通に送る」ことにシフトしていくケースもしばしばあります。 

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