こちら診察室 内視鏡検査・治療と予防医療

胃がん、早期発見が治療のカギ 【第5回】

 今回は胃がんについて説明します。前回の記事では胃がんの原因となるピロリ菌感染を取り上げましたが、この菌を除去しても生涯にわたって胃がんのリスクは高くなると考えられています。内視鏡検査を定期的に行い、早期発見に努めましょう。

 ◇内側の粘膜で発生

 胃は食道からつながる袋状の臓器で、へその少し上辺りに位置します。食道側の入り口の部分を噴門(ふんもん)、十二指腸への出口の部分を幽門(ゆうもん)と呼んで区別しています。

 主な役割は、食道から流れてきた食べ物をためて消化することです。口の中で細かくかみ砕かれた食べ物は、胃の中で胃液によって消化された後に十二指腸に送られ、小腸・大腸で栄養や水分が吸収されていきます。幽門は消化された食べ物を十二指腸へ送り出す量を調節し、噴門は食道への逆流を防いでいます。

 胃がん食道がん大腸がんと同様に、胃の内側にある粘膜に発生します。進行すると、粘膜下層、固有筋層、漿膜(しょうまく)と深く広がっていき、近くの臓器にも直接浸潤したり、リンパ節や他の臓器に転移したりします。がん細胞が粘膜または粘膜下層にとどまっているものを早期胃がん、筋層より深部に達したものを進行胃がんと呼び、内視鏡手術は前者の治療法として用いられるのが一般的です。

 胃がんの大きな要因はピロリ菌の感染や喫煙です。塩分や塩分の高い食品の摂取も発症リスクを高めると報告されています[1]。

 ◇ステージⅠなら5年生存率9割超

 胃がんは日本の部位別がん罹患(りかん)数で、男性では前立腺がんに次いで2位と、患者の多い病気です。一方で死亡率は低下しており、例えばステージ(病期)Ⅰと呼ばれる早期の場合には、胃がんのみを原因とした5年生存率(ネット・サバイバル)は90%を超えています。

がん患者のステージ別生存率(国立がん研究センターのホームページより)

  ステージは深達度と呼ばれるがん細胞の深さと、転移があるかどうかによって判断されます。内視鏡治療のみで根治が期待できる胃がんの多くは、T1aと呼ばれて深達度が浅く、ステージはⅠ。胃の外側まで到達するような深さだったり、他の臓器に転移が見られたりするのはステージⅣで、その中間であるステージⅡとⅢは深達度とリンパ節転移の有無によって区別されます。ステージごとに推奨される治療方法は異なりますが、進行がんは治療の選択肢が狭まることが多いため、早期発見・早期治療が重要と言えるでしょう。

胃がんのステージ(臨床分類)=国立がん研究センターのホームペーより

 ◇初期は自覚症状なく

 胃がんの代表的な症状は、みぞおちの痛みや不快感、胸焼けや吐き気食欲不振などです。胃から出血している場合は黒い便が出たり、貧血を起こしたりすることも。ただ、早期の段階では症状がほとんどありません。進行しても症状がないまま発見されるケースもあるため、検診によって見つけることが重要と言えるでしょう。胸焼けなどは食道がんや胃炎、胃潰瘍でも見られるため、気になる症状がある場合は消化器内科医の診察を受けてください。

 検診はエックス線検査(バリウム検査)と内視鏡検査(胃カメラ)の二つが中心です。以前はバリウム検査が広く行われ、同検査で異常が見つかった際に内視鏡検査が行われていましたが、内視鏡検査も厚生労働省が推奨してから実施例が増えています[2]。

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