こちら診察室 内視鏡検査・治療と予防医療

胃がん、早期発見が治療のカギ 【第5回】

 ◇主な治療法

 胃にがんがあることが分かった場合には、画像検査などによって臨床分類と呼ばれる病状の評価が行われ、患者さんに合わせた治療方法が選択されます。手術で切除した病変の病理診断から実際のがんの広がりが判明し、治療方針が変わることもあるので注意が必要です。主な治療法は次の通りです。

 ・内視鏡手術

 内視鏡を使って胃の内側からがんを切除する方法で、転移がなく粘膜層にとどまっている早期がんに対して行われます。外科手術と比べると体に対する負担が少なく、がんの切除後も胃が残るため、食生活への影響が少ない治療法と言えるでしょう。治療では、粘膜下層から病変をはがすように腫瘍を切除する内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が一般的に行われます。

内視鏡的粘膜下層剥離術(国立がん研究センターのホームページより)

内視鏡的粘膜下層剥離術(国立がん研究センターのホームページより)

 ・外科手術

 内視鏡による切除が難しい場合には、外科手術が推奨されています。手術の方法としては、おなかを切る開腹手術、おなかに小さな穴を開けて行う腹腔(ふくくう)鏡手術、ロボット手術などがあります。自身に合った最適な方法を選択しましょう。

 ・化学療法

 抗がん薬、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬などを使ってがん細胞を死滅させる方法です。手術の前や後に化学療法を組み合わせることもあります。

胃がん治療の選択(国立がん研究センターのホームページより)

胃がん治療の選択(国立がん研究センターのホームページより)

 ◇40歳以上は検診対象

 厚生労働省はがん検診の指針を定め、市町村による科学的根拠に基づく検診を推進しています。今のところ市町村単位での胃がん検診の対象は40歳以上ですが、ピロリ菌感染がある場合には早期の除菌が望ましく、また胃がんは早期発見・早期治療が重要です。胃部不快感などの症状がある人は積極的に内視鏡検査を受けてください。

 内視鏡の技術も進歩し、経鼻内視鏡や鎮静剤の使用など苦痛を減らすための取り組みも進んでいます。ピロリ菌の除去後であっても胃がんのリスクが高いことも分かっており、胃の健康を維持するためにも定期的な検査を受けましょう。(了)

高木院長

高木院長

高木謙太郎(たかぎ・けんたろう)
 2007年東京慈恵会医科大学卒。同大学付属柏病院、東京都立墨東病院、東京都保健医療公社豊島病院などを経て22年5月に四谷内科・内視鏡クリニック(新宿区)を開業。「胃がん大腸がんで亡くなる人をゼロに」をミッションに、人と人のつながりを大切にした、専門的で高度な医療を提供している。


【参照】

1.国立研究開発法人国立がん研究センター がん情報サービス:胃がん 予防・検診
https://ganjoho.jp/public/cancer/stomach/prevention_screening.html

2.厚生労働省:がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001210356.pdf

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