こちら診察室 知ってる?総合診療科
第1回 何を診る診療科なの?
「診断医」、地域では「家庭医」 ~総合診療医の出番です~
「総合診療科」という名前を見ることが珍しくなくなってきました。しかし、どのような患者を診る診療科なのか、まだまだ十分に理解されていない、分かりにくい存在だと思います。昭和の高度経済成長期ごろまで、大学病院などの大病院を除く多くの診療所や病院では、医師がさまざまな病気や外傷を1人で診てきました。中には、はしかの幼児を診る外科医や盲腸の手術をする内科医もいたほどです。
そのような時代、1人の医師がカバーできる患者の範囲はとても広かったと言えます。
総合診療医の頭の中には「一般内科」「小児科」「循環器内科」などさまざまな科の知識
◇細分化される医療現場
現在では、このような事例は離島や過疎地の診療所、大規模災害の被災地くらいでしか見られないでしょう。外科と内科はもちろん、それぞれの中も臓器や疾患ごとに細分化され、多くの医師はその中から専門分野を選んで教育や研修を受けて経験を積んでいくからです。
当然、それぞれの専門分野で最新の知識や治療法を習得し、経験を重ねることで適切な診断や治療ができる確率が高まります。
この結果、昔は一まとめにされていた内科から、心臓と血管の病気を診る診療科として「循環器内科」が独立しました。同様に胃や腸などの消化管、肝臓や胆のう、膵臓(すいぞう)の病気を診る「消化器内科」も別の診療科として登場しています。
◇「ペースメーカー外来」も
今では循環器内科の医師が消化器の病気を診るのも、逆に消化器内科の医師が循環器の病気を診ることも、大きな医療機関ではほとんどなくなったと言えます。
最近ではさらに細分化が進み、例えば循環器内科の中で、不整脈の患者に手術で体に埋め込んだ機器の管理を専門にする「ペースメーカ外来」や、通常の治療ではなかなか血圧が下がらない患者を対象とした「高血圧外来」のように、臓器別の診療科の中で特定の疾患別にも細分化されています。
総合診療科への入口は1階真正面に=東京都新宿区の東京医大病院
◇一刻を争う病気は…
しかし、患者は最初から分類されているわけではありません。胸痛や発熱などの自覚症状を訴えて受診する場合でも、健診などで検査数値に異常が見いだされて精密検査などのために紹介された場合でも、原因がどこにあるのか、治療法が何かは分かっていません。
そんな時にどう対応するのか。症状や検査結果に関係がありそうな診療科の医師が順番に診察して、原因である臓器とそこから生じた病気を絞り込む。確かに確実な方法ですが、時間と人手から見れば無駄が多くなりますし、心筋梗塞のように一刻を争う病気では危険です。
◇入り口では決めない
そこで患者が訴える症状や検査結果から、怪しい臓器や病気を絞り込み、必要なら臓器別・疾患別の専門医に治療を引き継ぐ。総合診療科は、そんな役割を果たしています。もちろん、インフルエンザや鉄欠乏性貧血によるめまいのような「コモンディジーズ」と呼ばれる一般的な疾患や症状ならば、総合診療科で治療をします。
このように総合診療医の特徴のひとつは「診断医」なのです。ですから臓器別診療科とは異なり、入り口で対象を決めていることは基本的にはないのです。
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