消化器の病気 家庭の医学

■過敏性腸症候群・慢性下痢症
・過敏性腸症候群で、腹痛下痢と便秘をくり返すタイプ、腹痛と下痢が主のタイプには、体質体格を問わず、まず第一に桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう:陰・虚)を用います。虚弱の傾向があれば、この処方に麦芽糖を加えた小建中湯(しょうけんちゅうとう:陰・虚)がよいでしょう。
・腹痛を主とするタイプで、ストレスによって症状が悪化する人には柴胡桂枝湯(さいこけいしとう:陽・虚・肝の失調)を用います。
・やせて胃の弱い冷え症の人の慢性下痢には人参湯(にんじんとう:陰・虚・気虚〈ききょ〉)を用います。
・冷え性で、疲れやすい人の慢性的な下痢には真武湯(しんぶとう:陰・虚・水毒〈すいどく〉)を用います。
・おなかにガスがたまってつらい場合には、上に記した方剤とあわせて香蘇散(こうそさん:陽・虚・気鬱〈きうつ〉)を用いてよいことがあります。

■習慣性便秘
 便秘の治療は簡単なようでとてもむずかしいのです。いろいろとためして、自分にあった漢方方剤を見つけ出さなければなりません。専門医ともよく相談してください。
・便秘に広く用いられるのが大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう)です。
・大黄甘草湯で十分な効果がないときは調胃承気湯(ちょういじょうきとう:陽・やや実)を用います。
・時に腹痛を伴う便秘には桂枝加芍薬大黄湯(けいしかしゃくやくだいおうとう:陰・虚から実)を用います。
・高齢者、虚弱者の便秘には麻子仁丸(ましにんがん:やや陽・やや虚)を用います。
・ウサギの糞のように、乾燥してコロコロとしたかたい便が出るときには潤腸湯(じゅんちょうとう:やや陽・やや虚)を用います。腸の内容物にうるおいをつける作用があります。
・便秘だけでなく、月経異常、肩こり、頭痛、のぼせもあるという、丈夫な若い人には桃核承気湯(とうかくじょうきとう:陽・実・?血〈おけつ〉)を用います。
・冷え症で、おなかにガスが多くて苦しく、下剤では腹痛や下痢が起こるときには大建中湯(だいけんちゅうとう:陰・虚・気虚〈ききょ〉)を用います。

(執筆・監修:医療法人社団誠馨会 千葉中央メディカルセンター和漢診療科 顧問 寺澤 捷年
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