乳児下痢症、急性胃腸炎〔にゅうじげりしょう、きゅうせいいちょうえん〕 家庭の医学

 乳児期の下痢は重症の脱水を伴う特有の症状を呈するので、急性胃腸炎のなかで特別に考慮する必要があります。

[原因]
 冬に流行するロタウイルスやノロウイルスなどのウイルス感染が多く占めます。便に血がまじるときは、腸管出血性大腸菌(病原性大腸菌)、サルモネラ、カンピロバクターなどの細菌性下痢症を考えますが、これらは食中毒の原因としても重要です。

[症状]
 吐き気と下痢で、発熱を伴うこともあります。吐き気は1~2日でよくなりますが、下痢は1週間程度持続します。からだの水分が減ってきて、皮膚が乾いて弾力性が失われたり、くちびるや舌も乾きます。元気がなくなり、うとうと眠りがちになるようであれば重症と考えられます。

[診断]
 便の培養検査で細菌の種類がわかります。便のロタウイルスやノロウイルスの抗原は、15分程度で検査ができ、ウイルス感染の診断ができます。

[治療]
 水分と電解質(ナトリウムやカリウム)を補給します。吐き気が強くて食べられないときや、中等症以上の脱水時には、点滴をおこないます(輸液療法)。なお、抗菌薬は一部の細菌性のものに使用することがあります。
□食事療法
 水分は、小児用イオン飲料などを欲しがるだけ飲ませます。母乳もやめる必要はありません。食べられれば、食べ慣れた食事を自由に食べさせますが、牛乳、甘すぎるもの、脂の多すぎるものは避けましょう。
 吐き気のあるときに一度にたくさん飲んだり食べたりすると吐いてしまうので、少量を回数を多くして与えます。以前の食事指導では、下痢がとまるまで腸を休ませる絶食に始まり、水、重湯、おかゆと、ゆっくりふやす方針がとられてきました。最近では、食事を早期再開し栄養をとったほうが、一時は下痢が少々ふえても結果としてこのほうが回復が早いということがわかってきました。

(執筆・監修:自治医科大学 名誉教授/茨城福祉医療センター 小児科 部長 市橋 光
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