思春期の生理・病理

■思春期とは
 女性のライフサイクルは小児期、思春期、成熟期、更年期、老年期の5段階に分けられます。すなわち、思春期とは小児期から成熟期の移行期です。国際的な定義では「身体的には乳房発達、陰毛発生などの二次性徴の出現から性成熟(二次性徴が完成し、月経周期がほぼ順調となる)までの段階であり、精神的には子どもから大人に向かっての自我の発達の時期ならびに自己認識パターンの確立段階、さらに社会的には性的欲望が出現し、両親への依存状態から完全自立するまでの過渡期」とされています。
 個人差が大きいのですが、年齢的には8~9歳から17~18歳ころまでが思春期に相当します。性成熟については、乳房(にゅうぼう)発達は10歳ころ、陰毛の発生は11歳ころ、初経(しょけい)は12歳ころというのが日本人女性の平均です。ただし初経以後、正常の月経周期(規則的な排卵がみとめられる)になるまで通常でも1~3年を要し、人によってはさらに時間がかかる場合もあります。

■思春期の異常
 思春期の女性がとまどう問題としては、社会・家庭・学校に適応できないこと、および性的欲望が生じることによる精神・心理的な問題と、生殖能力の確立に伴うさまざまな身体的問題が主要なものといわれています。そのうち産婦人科に関係するものとしては性成熟の異常、特に月経異常に関するものが最多です。

□思春期早発症
 異常に早い二次性徴発現あるいは月経の発来をみる小児期の疾患です。二次性徴の開始として乳房発育がみられます。7歳未満の女児に二次性徴発現や月経様出血がみられた場合は、小児科の専門医師に相談してください。下垂体や卵巣、副腎などの精密検査が必要です。異常がある場合は早期治療が原則とされています。適切に治療しない場合には最終的に低身長になることがあります。

□原発性無月経
 18歳になっても初経が発来しない状態を原発性無月経といいます。原発性無月経の原因としては、性分化の異常(女性に分化していく過程での異常)、性染色体の異常、性腺の欠損や形成不全など先天的異常によるもの、下垂体や副腎の機能異常、先天的な処女膜閉鎖や腟(ちつ)閉鎖などの性器の形態異常による潜伏月経(月経があるにもかかわらず月経血が腟から出てこない)などがあります。
 原発性無月経を起こす疾患のなかには、早期に治療開始が必要なものがあります。原発性無月経の定義では基準が18歳ですが、実際には15歳になっても初経がない場合には、初経を18歳まで待つのではなく産婦人科の専門医師に相談してください。また、13歳以降で乳房発育がまったくみられない場合も、初経を待つのではなく小児科か産婦人科の専門医師に相談してください。卵巣性無月経の原因となるターナー症候群や性腺機能低下症などの場合には、早期の治療開始により低身長や骨量低下を予防できることがあります。また、下垂体や副腎の機能異常、外性器異常などの疾患では治療により治るものがあります。

□続発性無月経
 月経が3カ月以上みられない状態を続発性無月経といいます。産婦人科を受診される思春期女性の主訴としてはもっとも多いものですが、先述のように、初経が発来しても正常の月経周期が確立するまでには一定の時間が必要です。したがって続発性無月経であっても、性成熟を待ってよい場合と、機能障害として治療を要する場合との鑑別が必要です。一般に初経から3年以内で、性交渉の経験がなく、次に述べる機能障害となる原因がない人の場合は6カ月くらいまではようすをみてよいと思います。
 続発性無月経をきたす機能障害としてはストレスによるもの、ダイエット、スポーツなどによる体重減少によるもの(体重減少性無月経)、なんらかの精神的要因により摂食障害が生じたもの(神経性食思不振症、拒食症とも呼びます)などがあり、それぞれ原因別に指導あるいは治療が必要です。もちろん性交渉の経験がある場合は、妊娠を念頭に置かなければなりません。

□不正出血と貧血
 初経から排卵周期が確立するまでは、続発性無月経のみならず、頻発月経、希発月経(月経の遅れがしばしば起こる)などの月経異常や不正出血がよく起こります。性交渉の経験がなく、出血が少量の場合は成長とともに軽快することが多いため、しばらく経過をみてもよいでしょう。いっぽうで、出血が多量あるいは長期間続く場合は貧血の治療が必要になることがあります。また流産や切迫流産などの妊娠に伴う出血の可能性も否定できません。このような場合には産婦人科を受診してください。

□月経困難症
 月経困難症は月経に伴って起こるさまざまな症状の総称で、下腹部痛・腰痛、腹部膨満(ぼうまん)感、吐き気・嘔吐、頭痛、疲労感、食欲不振などが起こります。月経困難症は、子宮内膜症子宮筋腫子宮腺筋症などの疾患に伴う器質性月経困難症と、特定の疾患のない機能性月経困難症に分けられます。思春期では、機能性月経困難症が多いといわれています。まれではありますが、月経血が体外に排出されにくい先天性子宮形態異常に伴う器質性月経困難症の場合もあります。
 思春期に月経困難症があると学業および学外活動への悪影響(成績が下がるなど)が懸念されていること、月経困難症を伴う思春期・若年女性では将来の子宮内膜症の罹患(りかん)率が高く、月経痛が強いほど子宮内膜症になる可能性が高いこと、いったん子宮内膜症を発症すると3~5割が不妊になることなどが最近わかってきており、月経困難症に対して思春期から適切に対処したり、治療をおこなうことを考慮したりすることが大切であると考えられるようになっています。産婦人科での治療では、症状に応じて、鎮痛薬、漢方薬、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(低用量ピル)、経口黄体ホルモン薬(ジエノゲスト)などのなかから治療法を選択することができるため、痛みをがまんするだけで様子をみるよりは、産婦人科を受診して医師に相談してみることをおすすめいたします。

(執筆・監修:東京大学大学院医学系研究科 准教授〔産婦人科学〕 廣田 泰)
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