橋中心髄鞘崩壊、マルキアファーヴァ・ビーナミ病〔きょうちゅうしんずいしょうほうかい〕 家庭の医学

 慢性アルコール中毒者が突然昏睡(こんすい)状態になることがあります。多くの場合は低血糖発作によるもので、点滴で軽快します。ところがなかには脳の神経線維のカバー(髄鞘)が溶けてしまう病気が起こります。これが大脳と脊髄をむすぶ橋に起こるのが橋中心髄鞘崩壊で、左右の大脳をつなぐ脳梁(のうりょう)に起こるのがマルキアファーヴァ・ビーナミ病です。
 橋中心髄鞘崩壊は低ナトリウム血症を点滴で急速に補正してしまったときにも起こります。浸透圧の急激な変化により髄鞘が崩壊します。症状は強い意識障害(昏睡状態)、四肢のまひです。MRI(磁気共鳴画像法)では橋の中心に病巣がみとめられます。
 マルキアファーヴァ・ビーナミ病は、最初はイタリアの赤ワインを飲みすぎたアルコール中毒患者で見いだされました。その後は焼酎や日本酒の飲みすぎでも起こることがあきらかにされています。左右の脳が分離するために起こる症状で、右手でつかんだ物の名前をいったり、いろいろな動作を自由にできますが、左手でつかんだ物の名前をいうことはできず、左手で敬礼や金づちを打つまねをすることができません。これは左手から右脳へ入った情報が、左の脳にある言語中枢に伝わらないためです。

(執筆・監修:一口坂クリニック 作田 学)