唾液腺の機能の異常
唾液の生理機能としては消化作用、潤滑作用、保護作用、抗菌作用などがありますが、唾液の分泌量の異常がすべてに影響します。
唾液分泌量の減少による口の中の乾燥を口腔(こうくう)乾燥症といいます。粘膜の乾燥、痛み、剥離(はくり)、味覚障害など、さまざまな症状が出現します。
[治療]
抗不安薬、抗うつ剤、降圧剤などの薬剤の影響が疑われる場合には、薬剤の変更をおこないますが、原因が不明なことが多く、唾液量が少ない場合は、唾液腺マッサージ、人工唾液の使用など対症療法をおこないます。また、口腔衛生状態が不良になることが多く、う蝕(しょく)ができやすい環境となるため徹底したプラークコントロールが重要です。
■唾石症
唾石(だせき)は唾液腺や唾液が流れ出る管の中にできる結石で、この病態が唾石症です。
唾石のできた場所によって、腺体内(唾液腺の中)唾石と管内唾石に分類されます。唾液腺の中では顎下腺(がくかせん)に多く、特に顎下腺管の中に多くできますが、頻度は少ないものの、上くちびるやほおの粘膜にある小唾液腺にもできます。男性にやや多くみられます。
唾石が増大するに伴い唾液の排出障害が出現します。食事時に唾液腺のある部分がはれて、ツーンとした痛み(唾仙痛〈だせんつう〉)が出るのが特徴です。管内唾石は小さいうちからこのような症状が出ますが、腺体内唾石は唾石がかなりの大きさになるまで自覚症状が出ないことがあります。歯科治療の際に撮影されたX線写真で偶然発見されることもあります。
腺体内唾石は円形のことが多く、管内唾石は細長いのが特徴です。
診断はX線写真の所見でおこなわれますが、カルシウム分が少なくて画像で確認できないものもあります。
[治療]
管内唾石は口の中から唾石のみを摘出します。小さなものでは唾液管内視鏡を用いての摘出も可能です。腺体内唾石はあごの下に切開を加え、唾液腺とともに摘出をおこないます。
■唾液腺炎
唾石あるいは異物が原因となり、唾石周囲の唾液腺管炎や急性唾液腺炎が引き起こされます。耳下腺(じかせん)では耳の下がはれ、顎下腺ではあごの下がはれます。唾液の出口も赤くはれ、黄色いうみが排泄(はいせつ)されることがあります。耳下腺では唾石や異物以外の原因不明のものも多く、慢性化するものがあります(慢性再発性耳下腺炎)。
急性炎症をくり返し、慢性炎症になると唾液腺がかたく大きくなるものがあります(慢性硬化性唾液腺炎)。舌下腺では舌の下にかたいかたまりとしてみられ、腫瘍との鑑別が困難なことがあります。
[治療]
急性期には抗生物質の投与をおこないます。唾石など原因のはっきりしているものでは唾石の摘出をおこないます。慢性硬化性唾液腺炎で審美的障害が大きい場合に、摘出することがあります。
■唾液腺腫瘍
口の粘膜の下にある小唾液腺からさまざまな腫瘍が発生します。口蓋(こうがい)にもっとも多く、ほおの粘膜、くちびるなどにも発生します。良性腫瘍では多形性腺腫が多く、そのほかには単形性腺腫、基底細胞腺腫などが発生します。症状は粘膜の下にこぶのようなかたまりとしてみられます。発育は遅く、かなり大きくなるまで痛みなどの症状は出ません。
[治療]
外科的切除がおこなわれます。悪性腫瘍の場合は腺様嚢胞(せんようのうほう)がん、粘表皮がんなどが発生します。初期には良性腫瘍と同じようにこぶのようなかたまりですが、まわりの組織や神経組織に浸潤(しんじゅん:徐々にひろがること)します。頸(けい)部リンパ節にも転移します。治療は周囲の健康な組織を十分含めた拡大切除がおこなわれます。
■シェーグレン症候群
乾燥性角結膜炎(ドライアイ)、口腔(こうくう)乾燥症(ドライマウス)をおもな病変とし、関節リウマチなども併発する自己免疫疾患をシェーグレン症候群といいます。30~50歳の女性に多くみられ、口の症状としては唾液分泌量の低下による口の乾燥、粘膜の萎縮(いしゅく)や痛みなどがみられます。目や鼻の中の乾燥を伴う場合もあります。このほかに耳下腺のはれなどもみられます。確定診断のため、下くちびるにある小唾液腺(だえきせん)から組織をとって検査することがあります。
根本的な治療法はなく、対症療法(出ている症状に対する手当て)が中心となります。
唾液分泌量の減少による口の中の乾燥を口腔(こうくう)乾燥症といいます。粘膜の乾燥、痛み、剥離(はくり)、味覚障害など、さまざまな症状が出現します。
[治療]
抗不安薬、抗うつ剤、降圧剤などの薬剤の影響が疑われる場合には、薬剤の変更をおこないますが、原因が不明なことが多く、唾液量が少ない場合は、唾液腺マッサージ、人工唾液の使用など対症療法をおこないます。また、口腔衛生状態が不良になることが多く、う蝕(しょく)ができやすい環境となるため徹底したプラークコントロールが重要です。
■唾石症
唾石(だせき)は唾液腺や唾液が流れ出る管の中にできる結石で、この病態が唾石症です。
唾石のできた場所によって、腺体内(唾液腺の中)唾石と管内唾石に分類されます。唾液腺の中では顎下腺(がくかせん)に多く、特に顎下腺管の中に多くできますが、頻度は少ないものの、上くちびるやほおの粘膜にある小唾液腺にもできます。男性にやや多くみられます。
唾石が増大するに伴い唾液の排出障害が出現します。食事時に唾液腺のある部分がはれて、ツーンとした痛み(唾仙痛〈だせんつう〉)が出るのが特徴です。管内唾石は小さいうちからこのような症状が出ますが、腺体内唾石は唾石がかなりの大きさになるまで自覚症状が出ないことがあります。歯科治療の際に撮影されたX線写真で偶然発見されることもあります。
腺体内唾石は円形のことが多く、管内唾石は細長いのが特徴です。
診断はX線写真の所見でおこなわれますが、カルシウム分が少なくて画像で確認できないものもあります。
[治療]
管内唾石は口の中から唾石のみを摘出します。小さなものでは唾液管内視鏡を用いての摘出も可能です。腺体内唾石はあごの下に切開を加え、唾液腺とともに摘出をおこないます。
■唾液腺炎
唾石あるいは異物が原因となり、唾石周囲の唾液腺管炎や急性唾液腺炎が引き起こされます。耳下腺(じかせん)では耳の下がはれ、顎下腺ではあごの下がはれます。唾液の出口も赤くはれ、黄色いうみが排泄(はいせつ)されることがあります。耳下腺では唾石や異物以外の原因不明のものも多く、慢性化するものがあります(慢性再発性耳下腺炎)。
急性炎症をくり返し、慢性炎症になると唾液腺がかたく大きくなるものがあります(慢性硬化性唾液腺炎)。舌下腺では舌の下にかたいかたまりとしてみられ、腫瘍との鑑別が困難なことがあります。
[治療]
急性期には抗生物質の投与をおこないます。唾石など原因のはっきりしているものでは唾石の摘出をおこないます。慢性硬化性唾液腺炎で審美的障害が大きい場合に、摘出することがあります。
■唾液腺腫瘍
口の粘膜の下にある小唾液腺からさまざまな腫瘍が発生します。口蓋(こうがい)にもっとも多く、ほおの粘膜、くちびるなどにも発生します。良性腫瘍では多形性腺腫が多く、そのほかには単形性腺腫、基底細胞腺腫などが発生します。症状は粘膜の下にこぶのようなかたまりとしてみられます。発育は遅く、かなり大きくなるまで痛みなどの症状は出ません。
[治療]
外科的切除がおこなわれます。悪性腫瘍の場合は腺様嚢胞(せんようのうほう)がん、粘表皮がんなどが発生します。初期には良性腫瘍と同じようにこぶのようなかたまりですが、まわりの組織や神経組織に浸潤(しんじゅん:徐々にひろがること)します。頸(けい)部リンパ節にも転移します。治療は周囲の健康な組織を十分含めた拡大切除がおこなわれます。
■シェーグレン症候群
乾燥性角結膜炎(ドライアイ)、口腔(こうくう)乾燥症(ドライマウス)をおもな病変とし、関節リウマチなども併発する自己免疫疾患をシェーグレン症候群といいます。30~50歳の女性に多くみられ、口の症状としては唾液分泌量の低下による口の乾燥、粘膜の萎縮(いしゅく)や痛みなどがみられます。目や鼻の中の乾燥を伴う場合もあります。このほかに耳下腺のはれなどもみられます。確定診断のため、下くちびるにある小唾液腺(だえきせん)から組織をとって検査することがあります。
根本的な治療法はなく、対症療法(出ている症状に対する手当て)が中心となります。
(執筆・監修:東京大学 名誉教授/JR東京総合病院 名誉院長 髙戸 毅)