治療・予防

ストレスはきっかけにすぎない
~円形脱毛症は自己免疫疾患(浜松医科大学医学部付属病院 伊藤泰介准教授)~

 円形脱毛症は老若男女を問わず、誰もが発症する可能性のある自己免疫疾患だ。本来自分の体を守るために働く免疫細胞が、何らかの原因で髪の毛の細胞を異物と見なし、正常な毛包を攻撃することで脱毛が生じる。浜松医科大学医学部付属病院(浜松市)皮膚科の伊藤泰介准教授に話を聞いた。

円形脱毛症

円形脱毛症

 ◇心の弱さとは無関係

 円形脱毛症には、髪の毛が10円玉や500円玉程度の大きさで1カ所のみ円形に抜ける単発型、2カ所以上が抜ける多発型がある。生え際が帯状に抜けたり、すべての頭髪が抜けたり、さらには眉毛やまつげなど全身の毛が抜けてしまうケースもある。

 「脱毛は一時的で自然に治る人もいれば、何度も繰り返す人もいます。進行のスピードも重症度も人それぞれです。一度重症化すると治療が長期にわたる可能性が高く、当院では10年以上通院する方も少なくありません」

 アトピー性皮膚炎やリウマチ、潰瘍性大腸炎など他の自己免疫疾患を合併する人もいる。こうした免疫機能の異常はストレスや遺伝、ウイルス感染、出産などが主な誘因と考えられる。「円形脱毛症の患者さんの多くは、心が弱いから発症したと自分を責めてしまいがちです。ストレスはきっかけの一つでしかないことを理解して、周囲の人は患者さんが望む形で支えてあげてください」

 ◇見る目を変える

 日本での有病率は約0.2~0.3%と推計され、徐々に増加している。医療機関の皮膚科を受診する患者の2.45%を占め、脱毛疾患の中では頻度が高いが、治療でいったん改善しても再発するなど発症後の管理が難しい。長引く治療と、髪を失い外見が変化してしまう心理的なつらさから、うつ病や不安神経症など深刻な影響が生じることもある。

 「見た目が気になる方は、髪が生えそろうまでかつらやバンダナを使用することもできます。ただ、部活動や受験会場など使用が認められない場や、プールや温泉に入りにくいこともあります」

 心が苦しくなったときは病気を語り合い、支え合う患者会に参加するのも一案だ。「大切なのは周囲の理解と共感です。いつ誰がなってもおかしくない病気だからこそ、みんなが見る目を変えることが大事です」と伊藤准教授は助言する。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

【関連記事】


新着トピックス