口とあごの病気の予防

■妊娠中の健康
 歯は乳歯も永久歯も妊娠(にんしん)中につくられます。妊娠中の母体の健康はその子どもの乳歯、永久歯の形成に深く関与します。出産後も母乳などを通じて乳児の歯の成長、発育に大きな影響を与えます。
 したがって、妊婦は母体自身の健康を保つだけでなく、母体の中で成長発育している胎児、あるいは哺乳(ほにゅう)中の乳児の歯の成長発育に必要な栄養素、特に良質なたんぱく質やカルシウム、リンなどの無機質、ビタミンを十分にとる必要があります。
 また、妊婦はホルモンの変化、唾液(だえき)の酸性化、食事の変化が原因となって、むし歯、歯周病、口の粘膜の病気にかかりやすくなりますので、ふつうのときよりもいっそう口の中の清掃に気をつける必要があります。

■刺激物の除去
 う蝕(しょく)などによって生じた歯の鋭いかど、適合のわるい入れ歯の縁やバネ、歯の間にはさまった食べ物のかす、あるいは喫煙などの慢性の刺激が加えられたりすると、口の粘膜の炎症、白板(はくばん)症、義歯(ぎし)性潰瘍(かいよう)などが起こり、放置しているとがんになる可能性もあります。褥瘡性潰瘍
 刺激物を除去しても治らない場合には、口腔(こうくう)外科の専門医を受診しましょう。特に、前がん病変として注目されている白板症がある場合には、発がんの原因となる刺激の除去、そのなかでも喫煙は絶対にやめなければなりません。

■悪習癖の除去 
 小児の指しゃぶり(吸指癖)、くちびるをかむ癖(咬唇癖〈こうしんへき〉)、舌の突き出し癖(弄舌〈ろうぜつ〉癖)、口呼吸、歯ぎしり、ゴム乳くびの常用などは、不正咬合(こうごう)の原因となります。

■かみ合わせの治療
 歯並びの異常、歯のつめ物や入れ歯の異常、歯の欠損などによるかみ合わせの異常が長い間続くと、ある特定の歯にだけ力が加わり、歯のまわりの組織に慢性の外傷(咬合〈こうごう〉性外傷)が起こり、歯周病の原因にもなります。また、顎(がく)関節や咀嚼(そしゃく)筋の異常を起こし、やがては顎関節症になります。

■感染病巣の除去
 口の中は、むし歯や歯周病、智歯(ちし)周囲炎などの感染病巣ができやすいところです。これらは心疾患をはじめとする全身病の原因となります。こうした病気をほうっておくと、全身の抵抗力が弱くなったときに急性発作による急性炎症をひき起こしたり、治りにくい慢性骨髄(こつずい)炎の原因となったりすることがあります。
 また、病巣感染から菌血症、さらに敗血症となり、全身の危険な病気をひき起こす場合もあります。感染病巣を治療によってなくすことが大切です。

■オーラルマネジメント
 オーラルマネジメントとは、口腔ケア、摂食嚥下(食べて飲み込むこと)のリハビリテーションなどに加え、口腔ケアを実施しやすい環境をととのえて、効率のよい口腔ケアをおこなうための歯科治療、口腔機能回復のための口腔機能回復訓練、患者・家族への口腔保健指導をおこなうことなどを含んだ広い概念を意味します。
 高齢者や周術期(手術後の回復期)の患者においては、口腔内の衛生状態が誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)の発症に影響することが認識され、現在では多くの施設で口腔ケアがおこなわれています。
 口腔ケアに関しては、広く認知されていますが、定義や施行方法などは標準化されていません。一般的には歯科医や歯科衛生士によるブラッシング指導をはじめ、歯科用の器具を用いた口腔内や義歯の清掃を中心としたケア方法を狭義の口腔ケアと称し、器質的口腔ケア・専門的口腔ケアともいわれています。いっぽうで、広義の口腔ケアはこれらの清掃に加え、摂食・嚥下機能の回復をはかるリハビリテーションや歯科治療も含めた概念として認識されています。
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