[歯と口とあごの構造とはたらき] 家庭の医学

■口とあごの構造
 口の入り口には上下のくちびるがあります。口の中は粘膜でおおわれていて、唾液(だえき)によって湿潤が保たれています。この唾液は大唾液腺と小唾液腺によってつくられています。大唾液腺は、両方のほおにある耳下腺(じかせん)、あごの下にある顎下腺(がくかせん)と、舌を上に上げると口の底にある舌下腺(ぜっかせん)です。小唾液腺は、くちびる、舌、口蓋(こうがい)、ほおなどの粘膜のなかにたくさんあります。
 上下のあごにはU字型に歯が並んでいて、この部分を歯槽堤(しそうてい)といいます。歯槽堤には歯が生え、まわりは歯肉と呼ばれる粘膜でおおわれています。上下のくちびるの粘膜やほおの粘膜と歯肉の間には、小帯(しょうたい)と呼ばれる「ひだ」があります。
 歯槽堤の内側には下あごでは舌が、上あごには口蓋があります。口蓋では前のほうのかたい部分を硬口蓋、奥のほうのやわらかな部分を軟口蓋と呼びます。
 舌の表面には舌乳頭(ぜつにゅうとう)と呼ばれる小さな突起物がたくさんあり、奥のほうには舌扁桃(へんとう)などの大きな凹凸があります。舌の裏側には口底があり、舌の裏側と歯肉との間のひだを舌小帯(ぜつしょうたい)と呼びます。その両側に舌下小丘(ぜっかしょうきゅう)と呼ばれる顎下腺と舌下腺の唾液の出口があります。

 あごの骨は上あごと下あごがあり、下あごには力の強い咀嚼(そしゃく)筋がついていて顎(がく)関節を支点として運動します。
 顎関節は側頭骨にある下顎窩(か)と下あごの関節突起の先端の下顎頭という楕円形をした骨とそれをおおう軟骨とで形成されています。下顎窩と下顎頭の間には、あごの動きを助けクッションの役目をする関節円板という軟骨に似た線維組織があります。さらに、関節の位置を安定させるための靱帯(じんたい)と、関節を動かすための筋肉(咀嚼〈そしゃく〉筋)から成り立っています。この関節は、ほかの部位の関節と異なり、蝶番(ちょうつがい)運動をするだけでなく、前方への滑走運動(ずらすような動き)を伴った複雑な運動をする関節です。


■歯の構造
 歯はあごの骨の一部である歯槽(しそう)骨の中に生えています。骨の中にある部分を歯根(しこん)、口の中で白く見えている部分を歯冠(しかん)、その境目を歯頸(しけい)部といいます。歯冠の表面はもっともかたいエナメル質、歯根の表面はセメント質で薄くおおわれ、それらの内側に象牙(ぞうげ)質があります。その内部に血管や神経を含む歯髄(しずい)があります。
 歯根のまわりには歯を支持している歯根膜があり、それによって歯はあごの骨と結合しています。歯頸部は歯肉によってかこまれ、歯と歯肉の間には歯肉溝と呼ばれるみぞがあります。歯肉溝は歯周病になると深くなり歯周ポケットと呼ばれます。

 歯の数は乳歯が20本(乳中切歯〈にゅうちゅうせつし〉、乳側切歯〈にゅうそくせつし〉、乳犬歯、第一乳臼歯〈にゅうきゅうし〉、第二乳臼歯がそれぞれ上・下の左・右に4本ずつ)、永久歯が32本(中切歯、側切歯、犬歯、第一小臼歯、第二小臼歯、第一大臼歯、第二大臼歯、親しらず(智歯〈ちし〉)がそれぞれ上・下の左・右に4本ずつ)あります。
 歯の種類によって大きさ、かたち、歯根の数が違います。

■歯の生えかた
 乳歯は、生後6カ月ころから下あごの乳前歯が生え出し、2歳半ころまでに20本がすべてそろいます。永久歯は6歳ころから生え出し、13歳ころまでに28本の歯が生えます。最後の親しらずは20歳ころに生えますが、最近は生えない人もたくさんいます。
 乳歯はその下から永久歯が出てくると、歯根が自然に吸収されて抜け落ちます。

■口のはたらき
 口のはたらきはおもに、食べる、話す、呼吸する、表情を作ることです。
 前歯は鋭い端をもち、食物をかみ切るはたらきをし、奥歯は臼(うす)のかたちをしていて、かみ砕いたり、すりつぶすはたらきをしています。口は食物を歯でかみ砕くだけではなく、唾液(だえき)とまぜあわせることにより消化の第1段階のはたらきをしています。さらに、食物を味わい、のどに送り込んで飲み込むはたらきもしています。また、口は鼻からの呼吸を助け、声門を通って出てきた息を舌、上あご、歯、くちびるなどを使って話し声に変えるはたらきをします。
 病気があったり手術を受けたりして、口の中のかたちが変わったり、老化による機能のおとろえなどで口の中の組織を上手に動かせなくなると、咀嚼(そしゃく:食物をかみ砕くこと)障害、嚥下(えんげ:食物を飲み込むこと)障害、呼吸障害や言語障害が起こります。

(執筆・監修:東京大学 名誉教授/JR東京総合病院 名誉院長 髙戸 毅)