病原体と感染経路、生体防御機構
病原体とは感染症の原因となる微生物のことで、病原微生物とも呼ばれます。自然界には多種類の微生物が存在しますが、人に感染し病気(感染症)を起こすものはそのごく一部です。病原体は細菌、真菌、リケッチア、ウイルス、マイコプラズマ、クラミジア、原虫などに分類され、プリオンや寄生虫も便宜的にこの仲間に入れられています。
感染症の場合には、それぞれ感染経路が決まっているので、その経路を遮断することにより伝染や感染を予防できます。感染経路には経口感染、接触感染、飛沫(ひまつ)感染、空気感染、動物媒介性感染などがあります。
なお、接触感染とは皮膚や粘膜の接触、または医療従事者の手や医療器具、その他手すりなどのような物体の表面を介しての間接的な接触により病原体が付着し、その結果、感染が成立する感染経路のことを指し、病原体が経口的に侵入する経口感染も接触感染の一つということになります(例:ウイルス性肝炎、ウイルス性胃腸炎、HIV感染症(AIDS)など)。
飛沫(ひまつ)感染とは、病原体を含んだ患者のせきやくしゃみ、あるいは気道の吸引などによって飛散した体液の粒子(飛沫)が他人の粘膜に付着することで感染が成立する感染経路のことで、飛沫が届く範囲は1~2m以内とされています(例:インフルエンザ、マイコプラズマ肺炎など)。空気感染とは、直径5μm以下のきわめて小さな飛沫核を気道から吸入することにより感染が成立する感染経路で、飛沫核は空気中を浮遊するので、直接患者のくしゃみやせきなどを直接あびなくても感染する可能性があります(麻疹〈はしか〉、水痘〈みずぼうそう〉、結核)。動物媒介性感染とは、蚊やダニなどの昆虫や動物により病原体が媒介される感染経路のことです(マラリア、デング熱、日本脳炎など)。
しかし、これらの経路で病原体に曝露(ばくろ)されても、からだには生体防御機構が備わっており、病原体を排除できるため、必ずしも感染症を起こすとは限りません。また、感染してもまったく症状を出さない不顕性感染が多いことも知られています。
生体防御機構とは、病原体などの異物や異常細胞(がん細胞や感染細胞)を排除し、からだを守るしくみです。たとえば、皮膚や粘膜は細菌やウイルスの侵入を防いでくれます。皮膚などに病原体が付着しただけでは感染しません。
また、かりに体内に入っても、細菌であれば好中球やマクロファージに貪食(どんしょく)されます。抗体(液性免疫)や細胞性免疫によっても排除されます。これらの機能やメカニズムが生体防御機構と呼ばれているものです。
(執筆・監修:熊本大学大学院生命科学研究部 客員教授/東京医科大学微生物学分野 兼任教授 岩田 敏)
感染症の場合には、それぞれ感染経路が決まっているので、その経路を遮断することにより伝染や感染を予防できます。感染経路には経口感染、接触感染、飛沫(ひまつ)感染、空気感染、動物媒介性感染などがあります。
なお、接触感染とは皮膚や粘膜の接触、または医療従事者の手や医療器具、その他手すりなどのような物体の表面を介しての間接的な接触により病原体が付着し、その結果、感染が成立する感染経路のことを指し、病原体が経口的に侵入する経口感染も接触感染の一つということになります(例:ウイルス性肝炎、ウイルス性胃腸炎、HIV感染症(AIDS)など)。
飛沫(ひまつ)感染とは、病原体を含んだ患者のせきやくしゃみ、あるいは気道の吸引などによって飛散した体液の粒子(飛沫)が他人の粘膜に付着することで感染が成立する感染経路のことで、飛沫が届く範囲は1~2m以内とされています(例:インフルエンザ、マイコプラズマ肺炎など)。空気感染とは、直径5μm以下のきわめて小さな飛沫核を気道から吸入することにより感染が成立する感染経路で、飛沫核は空気中を浮遊するので、直接患者のくしゃみやせきなどを直接あびなくても感染する可能性があります(麻疹〈はしか〉、水痘〈みずぼうそう〉、結核)。動物媒介性感染とは、蚊やダニなどの昆虫や動物により病原体が媒介される感染経路のことです(マラリア、デング熱、日本脳炎など)。
しかし、これらの経路で病原体に曝露(ばくろ)されても、からだには生体防御機構が備わっており、病原体を排除できるため、必ずしも感染症を起こすとは限りません。また、感染してもまったく症状を出さない不顕性感染が多いことも知られています。
生体防御機構とは、病原体などの異物や異常細胞(がん細胞や感染細胞)を排除し、からだを守るしくみです。たとえば、皮膚や粘膜は細菌やウイルスの侵入を防いでくれます。皮膚などに病原体が付着しただけでは感染しません。
また、かりに体内に入っても、細菌であれば好中球やマクロファージに貪食(どんしょく)されます。抗体(液性免疫)や細胞性免疫によっても排除されます。これらの機能やメカニズムが生体防御機構と呼ばれているものです。
(執筆・監修:熊本大学大学院生命科学研究部 客員教授/東京医科大学微生物学分野 兼任教授 岩田 敏)