マラリア〔まらりあ〕 家庭の医学

 マラリア原虫による蚊媒介感染症で、媒介蚊はハマダラカです。亜熱帯・熱帯地域を中心に感染者数が多く、世界的に重要な感染症で、WHO(世界保健機関)の推計によると、年間2億人以上の罹患者と200万人の死亡者があるとされています。
 感染するマラリア原虫の種類によって熱型が異なり、三日熱マラリア、四日熱マラリア、卵形マラリア、熱帯熱マラリアに分けられますが、熱帯熱マラリアでは、早期に適切な対応をしないと、短期間で重症化し死にいたることがあるので注意が必要です。特にマラリアに対して免疫のない旅行者や小児では重症化しやすいとされています。熱帯熱マラリアは、アフリカやアジア・太平洋の熱帯地域が流行の中心ですが、三日熱マラリアは、韓国や中国といった温帯地域でも問題になっています。国内では年間40~80例の発生が報告されていますが、いずれも海外からの輸入例です。
 原虫侵入後の潜伏期は、熱帯熱マラリアで12日前後、四日熱マラリアは30日前後、三日熱マラリアと卵形マラリアでは14日前後です。発熱発作、貧血、脾臓(ひぞう)のはれが特有の症状です。
 治療には抗原虫薬を投与します。予防のためには流行地に出かけたときは、蚊に刺されないようにすることが重要です。媒介蚊のハマダラカは夜間活動するので注意しましょう。また、抗原虫薬の予防内服という方法もありますので、流行地に渡航する際には専門医に相談してください。有効なワクチンの開発は困難でしたが、2021年10月に感染阻止ワクチンRTS,S/AS01が、世界保健機関(WHO)から中等度から高度流行地の小児への予防接種として推奨されました。

【参照】寄生虫病:マラリア

(執筆・監修:熊本大学大学院生命科学研究部 客員教授/東京医科大学微生物学分野 兼任教授 岩田 敏)
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