感染症の種類

 感染症とは病原体(病原微生物)が体内に侵入し、発熱その他の症状を出した場合のことを指し、なかには他の人に伝染するものもありますが、伝染しないものもたくさんあります。伝染するものであっても感染経路を断てば伝染を防止できます。たとえばコレラや赤痢は経口感染なので手洗いを徹底したり、水や食物の加熱などにより殺菌すれば感染を予防できます。
 痘瘡(とうそう:天然痘)は種痘のおかげで1980年に地球上から姿を消し、小児まひ(ポリオ)もあと一歩で根絶できる段階にありますが、逆に、感染症のなかには新興感染症あるいは再興感染症として増加しているものがいくつかあり、まん延防止のために特に啓発や対策が必要な場合がふえてきています。
 1897年(明治30年)に制定された「伝染病予防法」はこのような現状にあわなくなり、1999年3月31日をもって廃止され、同年4月1日から「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)が施行されました。このため、従来の「性病予防法」や「エイズ予防法」も廃止されました。
 感染症法では、従来の社会防衛的色彩を捨て、個人の人権を最大限尊重し、偏見・差別のない感染症対策を構築し、よりよい医療を提供することをその精神としています。予防対策を充実させるため、感染症の動向調査(サーベイランス)に力を入れ、拡大防止に迅速に対応できるようになっているのも特徴です。
 2003年には重症急性呼吸器症候群(SARS〈サーズ〉:severe acute respiratory syndrome)が新興し、またバイオテロで痘瘡が再興するおそれも生じてきたため、2003年11月に改正されました。また、2007年4月1日の改正では「結核予防法」と統合されました。さらに、高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)の感染拡大状況と新型インフルエンザが発生した場合のまん延に備え、2008年5月に改正がおこなわれ、2013年には感染拡大が続いているH7N9型鳥インフルエンザが対象疾患に加えられるなど、変化していく感染症に応じて法体制をととのえ対策の充実が図られています。最近では、2016年2月に、ジカウイルス感染症の流行を受けて一部改正がおこなわれています。
 改正された「感染症法」では既知の感染症のうち、サーベイランスや対策が必要な感染症を一類感染症から五類感染症までの5種類に分類し、また、新たに問題となる感染症の可能性を考慮して、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症、新感染症が加えられています。
 以下に「感染症法」による感染症の分類を述べます。
1.一類感染症
 感染力、かかった場合の重篤性など、総合的な観点から危険性がきわめて高く、原則的に感染症指定医療機関に入院が必要な感染症のことで、次の7疾患がこれに該当します。全例届出が必要とされています。
 エボラ出血熱、クリミア・コンゴ熱、痘瘡(とうそう)、南米出血熱、ペスト、マールブルグ病、ラッサ熱。
2.二類感染症
 感染力、かかった場合の重篤性など、総合的な観点から危険性が高く、状況に応じて入院が必要な感染症で、次の6疾患が該当します。全例届出が必要とされています。
 急性灰白髄炎(ポリオ)、結核、ジフテリア、重症急性呼吸器症候群(SARS:病原体がベータコロナウイルス属SARSコロナウイルスであるものに限る)、中東呼吸器症候群(MERS〈middle east respiratory syndrome〉:病原体がベータコロナウイルス属MERSコロナウイルスであるものに限る)、鳥インフルエンザ(H5N1、H7N9)。
3.三類感染症
 総合的な観点から危険性は高くないが、特定の職業への就業によって感染症の集団発生を起こしうるため、特定職種への就業制限が必要な感染症で、次の5疾患が該当します。全例届け出が必要とされています。
 コレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症、腸チフス、パラチフス。
4.四類感染症
 蚊や脊椎動物、飲食物を介して伝播する感染症のうち、人から人への伝播が比較的少なく、動物や飲食物の消毒や廃棄、移動制限などの処置がまん延防止上有効である感染症が該当します。
 A型肝炎、E型肝炎、アメリカでひろがっているウエストナイル熱(脳炎)、オウム病、Q熱、狂犬病、鳥インフルエンザ(H5N1およびH7N9)を除く鳥インフルエンザ、サル痘、炭疽(たんそ)、デング熱、ジカウイルス感染症、日本脳炎など全部で44疾患あります。全例がサーベイランス報告の対象となります。
5.五類感染症
 国が発生動向調査をおこない、必要な情報を提供・公開していくことによって発生・拡大を防止すべき感染症で、48疾患があげられています。五類感染症には重症度においても、感染経路や感染力の強さにおいても、また発生頻度においても、さまざまなものが混在していますが、22種類の全数把握(全数届出)感染症と26種類の定点把握(定点届出)感染症の2つに大別されています。
 22種類の全数把握感染症と26種類の定点把握感染症を分野ごとに表で示します。

●五類感染症で全数届出が必要な疾患
1. アメーバ赤痢
2. ウイルス性肝炎(E型肝炎及びA型肝炎を除く)
3. カルバペネム耐性腸内細菌科細菌感染症
4. 急性脳炎
   (ウエストナイル脳炎、西部ウマ脳炎、ダニ媒介脳炎、
   東部ウマ脳炎、日本脳炎、ベネズエラウマ脳炎および
    リフトバレー熱を除く)
5. クリプトスポリジウム症
6. クロイツフェルト・ヤコブ病
7. 劇症型溶血性レンサ球菌感染症
8. 後天性免疫不全症候群
9. ジアルジア症
10. 侵襲性インフルエンザ菌感染症
11. 侵襲性髄膜炎菌感染症
12. 侵襲性肺炎球菌感染症
13. 水痘(入院例に限る。)
14. 先天性風しん症候群
15. 梅毒
16. 播種性クリプトコックス症
17. 破傷風
18. バンコマイシン耐性黄色ブドウ球菌感染症
19. バンコマイシン耐性腸球菌感染症
20. 風しん
21. 麻しん
22. 薬剤耐性アシネトバクター感染症


●指定届出機関が届け出るべき五類感染症
A. 小児科定点
 1. RSウイルス感染症
 2. 咽頭結膜熱
 3. A群溶血性レンサ球菌咽頭炎
 4. 感染性胃腸炎
 5. 水痘
 6. 手足口病
 7. 伝染性紅斑
 8. 突発性発しん
 9. 百日咳
 10. ヘルパンギーナ
 11. 流行性耳下腺炎
B. インフルエンザ定点
 12. インフルエンザ(鳥インフルエンザおよび
    新型インフルエンザ等感染症を除く。)
C. 眼科定点
 13. 急性出血性結膜炎
 14. 流行性角結膜炎
D. 性感染症定点
 15. 性器クラミジア感染症
 16. 性器ヘルペスウイルス感染症
 17. 尖圭コンジローマ
 18. 淋菌感染症
E. 基幹定点
 19. 感染性胃腸炎(病原体がロタウイルスであるものに
   限る)
 20. クラミジア肺炎(オウム病を除く)
 21. 細菌性髄膜炎(髄膜炎菌、肺炎球菌、インフルエン
   ザ菌を原因として同定された場合を除く)
 22. マイコプラズマ肺炎
 23. 無菌性髄膜炎
 24. ペニシリン耐性肺炎球菌感染症
 25. メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症
 26. 薬剤耐性緑膿菌感染症


 基本的には五類感染症のなかで比較的頻度の低いものを全数把握とし、しばしばみられるものを定点把握としています。したがって全数把握の22疾患はそう多いものではありませんが、ウイルス性肝炎、梅毒など、まれともいえない感染症もあります。クリプトスポリジウム症、劇症型溶血性連レンサ球菌感染症、後天性免疫不全症候群(HIV感染症、エイズ)、バンコマイシン耐性腸球菌感染症などは新興・再興感染症として日本でもふえてきつつあり、その動向が注目されています。
6.新型インフルエンザ等感染症
 次に掲げる感染性の疾病をいいます。
 新型インフルエンザ…新たに人から人に伝染する能力を有することとなったウイルスを病原体とするインフルエンザであって、一般に国民が当該感染症に対する免疫を獲得していないことから、当該感染症の全国的かつ急速なまん延により国民の生命および健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるものをいいます。
 再興型インフルエンザ…かつて世界的規模で流行したインフルエンザであって、その後流行することなく長期間が経過しているものとして厚生労働大臣が定めるものが再興したものであって、一般に現在の国民の大部分が当該感染症に対する免疫を獲得していないことから、当該感染症の全国的かつ急速なまん延により国民の生命および健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるものをいいます。
7.指定感染症
 既知の感染症のなかで、一類~三類および新型インフルエンザ等感染症に分類されていない感染症において、一類~三類および新型インフルエンザ等感染症に準じた対応の必要が生じた感染症を指定感染症とすることになっています。政令で1年間に限定して指定されます。
8.新感染症
 人から人へ伝染すると認められる疾患であって、既知の感染症とあきらかに異なり、その伝染力・重篤度から判断した危険性がきわめて高い感染症があらわれた場合、これを新感染症と呼ぶことになっています。2003年春にSARSがはじめて確認されたとき、新感染症として扱われましたが、現在は一類感染症に分類されています。
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