麻疹(measles)〔ましん(みーするす)〕 家庭の医学

 麻疹ウイルスによる急性熱性発疹(ほっしん)性疾患で、はしかとも呼ばれます。
 麻疹ウイルスの感染力は強く、飛沫(ひまつ)、飛沫核、接触感染などで感染し、潜伏期は通常10~12日間です。症状はカタル期(2~4日)には38℃前後の発熱、せき、鼻汁、くしゃみ、結膜充血、めやに、羞明(しゅうめい:まぶしさを強く感じること)などであり、この時期から頬粘膜にコプリック斑が出現します。発疹期(3~4日)には一度下降した発熱が再び高熱となり(39~40℃)、特有の発疹(小鮮紅色斑が暗紅色丘疹、それらが融合し網目状になる)が出現します。発疹は耳後部、頸部(けいぶ)、顔、体幹、上肢、下肢の順にひろがり、回復期(7~9日)には解熱し、発疹は消退し、色素沈着を残します。
 麻疹の発疹は、最初は小さな紅色の斑状丘疹で、次第に融合し全身にひろがります。7~9日ほどの経過で消退し色素沈着を残します。コプリック斑は周囲に紅い部分を伴う白色の小さな粘膜疹で、発疹が出現する前のカタル期から頬粘膜に認められます。麻疹に特有の粘膜疹で、診断に有用です。

 また、ワクチン接種後などで麻疹に対する不十分な免疫をもつ成人が麻疹に罹患した場合は、発熱や特徴的な発疹などの典型的な症状が出ないことがあり、これを修飾麻疹と呼んでいます。
 肺炎中耳炎クループ脳炎を合併する場合があり、またまれに麻疹ウイルスに感染後、数年から十数年以上経過して亜急性硬化性全脳炎を発症することが知られています。
 感染防止対策として、弱毒生ワクチンである麻疹ワクチンの接種による予防がもっとも重要です。1歳児と5歳以上7歳未満で就学前1年間の幼児を対象に、麻疹風疹混合ワクチンを用いた2回の定期接種がおこなわれており、国内での流行がコントロールされていることから、2015年3月に日本は麻疹排除国としてWHO(世界保健機関)から認定されました。今後は海外からの輸入感染症としての麻疹が国内で流行するリスクがあるので、麻疹含有ワクチンを未接種もしくは1回しか接種していない未罹患の成人は、麻疹含有ワクチンを接種して免疫をつけておく必要があります。通常は2回の接種で十分な免疫ができるはずです。

【参照】子どもの病気:麻疹

(執筆・監修:熊本大学大学院生命科学研究部 客員教授/東京医科大学微生物学分野 兼任教授 岩田 敏)
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