リスクの評価とリスクの管理

 リスクの議論においては、しばしば関係者の間で利害が対立し、どうリスクを管理するかという議論が先行しがちです。しかし、管理は正確な評価があってはじめて合理的なものになります。そしてリスクの評価にあたっては、とりあえずリスクの管理のことを離れて、できるだけ客観的に分析することが重要です。リスクの評価については、4つの段階があげられています。
 第1は、起こりうる被害の種類を同定することです。第2は、被害のそれぞれに対し、原因にどの程度曝露(ばくろ)するとどのくらいの頻度で発生するのかという量反応関係を調べること、第3の段階は、現実に人々が原因となる要因に曝露する量を測定または推定することです。第2と第3の情報をあわせると、最終的にどのくらいの被害が発生するのかを量的に把握することができます。これが第4の段階です。
 こうして得られたリスク評価の結果をもとにリスク管理の施策を決めるわけですが、リスク評価の結果がそのまま管理を決めるわけではありません。たとえば、自動車の増加は交通事故死の増加を招いています。2016年のわが国の保有する自動車は約8000万台でした。これに対して同じ年の交通事故死者(ほとんどが自動車事故)は約4000人。したがって、車2万台あたり、1人亡くなっていることになります。乱暴な議論では車を2万台減らせば、人が1人死なないですんだことになります。これも一種のリスク評価です。だからといって、リスク管理は単純に車を減らすということにはなりません。車のなかには救急車など直接人命を守るためのものもあれば、人間の生存のために必要な食料その他の生産や流通などの不可欠な目的で使われている車もあります。単純な交通事故についてのリスク評価だけでは管理は決められません。
 しかし逆に、車が生活に必要であるからといってリスク評価をないがしろにしたり、管理にあわせて評価を変えることは許されません。合理的な管理のためには、さまざまなリスクを評価し、また、経済性や代替の方法の可能性なども検討したうえで総合的に決定されるできであり、その基礎になる個々のリスクの評価はいったん管理を離れて、あくまで客観的に、かつ、ていねいにおこなう必要があります。

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