植え込み型除細動器(ICD)と皮下植え込み型除細動器(S-ICD)

 植え込み型除細動器(ICD:implantable cardioverter defibrillator)は、心室頻拍や心室細動といった命にかかわる重症な心室性不整脈(致死性不整脈)の発作が起こったときに自動的に作動してペーシング治療や電気ショックを与え、突然死を防ぐ医療機器です。植え込み手術は1時間半から2時間程度で、鎖骨の下のあたりを小さく切開し、皮膚の下に植え込みます。
 ICDは致死性不整脈を経験した人(二次予防)、あるいはその可能性が高いと予測される人(一次予防)が適応となります。
 2016年2月より日本でも皮下植え込み型除細動器(S-ICD:Subcutaneous-ICD)が使えるようになりました。左の胸の皮下に本体を入れて、リードは血管に入れずに皮膚の下を通して、胸骨の横に植え込みます。致死性不整脈が出たら、電流を流して除細動をするまったく新しいタイプのICDです。血管内にリードがないためペーシング機能が必要な患者さんには使えませんが、血管内にリードがあることで起こりうる、感染性心内膜炎三尖弁閉鎖不全などが回避できリード不全も少ない画期的なICDです。手術時間は従来の経静脈ICDと同じくらいです。
 重症心不全の人で右心室と左心室の同期不全で心不全が悪化している場合、両心室(右心室と左心室)ペーシングが心不全の治療に効果がある人もいます。このような患者さんには両心室ペーシング機能付き植え込み型除細動器(CRT-D)の植え込みも選択肢になります。
 ICDやCRT-Dの植え込み後は、ふつうに日常生活を送ることができます。

(執筆・監修:公益財団法人 榊原記念財団附属 榊原記念病院 循環器内科 副部長 井上 完起)