心室頻拍、心室細動〔しんしつひんぱく、しんしつさいどう〕

 心室から発生する頻脈には、心室性期外収縮のほかに心室頻拍と心室細動の2つがあります。心室頻拍は脈が突然1分間に180など急激に速くなっているものの、心電図の波形が一定のものです。これに対し、心室細動は脈のかたちが一定ではなく不規則で、心室がけいれんを起こし1分間の脈拍数が300など数えられないくらい速くなった状態です。

 心室頻拍は血圧が保たれ、すぐには意識を失わないこともありますが、心室細動になると、発症から5~10秒で意識がなくなって失神し、その状態が続くとそのまま亡くなってしまいます。心室頻拍の場合も、ほうっておくと心室細動に移行して、意識がなくなって突然死を起こすことがあります。
 こういった不整脈が突然死につながるのは、心筋梗塞や狭心症の発症が影響している場合があります。特に多いのが、心臓に血液を送る冠動脈がつまって心臓の筋肉が壊死(えし)を起こす急性心筋梗塞の直後に心室細動を起こすケースです。心筋梗塞を発症した直後、数日間から数週間は、心室頻拍や心室細動が起こりやすくなります。冠攣縮(かんれんしゅく)性狭心症では、一時的に冠動脈が狭くなって息切れや胸痛を起こしますが、心室細動を誘発することもあるので要注意です。
 また、風船のように心臓がふくらんでくる拡張型心筋症、おもに左室が肥大化する肥大型心筋症も突然死につながる不整脈を起こしやすくなります。拡張型心筋症は息切れといった症状が出て見つかることが多いのですが、肥大型心筋症は自覚症状がない場合が多いので突然死につながるような発作を起こすまでわからないこともあります。
 若い人の心室頻拍や心室細動の原因として、ブルガダ(Brugada)症候群とQT延長症候群があります。ブルガダ症候群は、1992年にスペイン人のブルガダ医師がはじめて報告した比較的新しい病気です。アジア人の男性に多く、睡眠中や安静にしているときに心室細動を起こすのが特徴で、いわゆるポックリ病(若年者の急性死)の原因といわれています。
 いっぽう、QT延長症候群は女性に多く、心臓が収縮したあと、興奮がもとに戻るのがおそいために心筋細胞が過敏になり、心室細動を起こすことがある病気です。ブルガダ症候群、QT延長症候群かどうかは、一般的には心電図検査を受ければ診断できます。どちらも特定の遺伝子に異常があることがわかっているので、遺伝子検査をすることもあります。
 治療としては、基礎心疾患のない(特発性といいます)心室頻拍では抗不整脈薬やベータ(β)遮断薬などの薬による治療や、カテーテルアブレーションによる治療が可能ですが、基礎疾患のある心室頻拍や心室細動では、突然死の予防のため植え込み型除細動器(ICD:implantable cardioverter defibrillator)が第一の選択になります。植え込み型除細動器
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