胃ポリープ・胃腺腫〔いぽりーぷ・いせんしゅ〕

 ポリープという言葉は広く知られており、「良性」であるとの認識が一般的ですが、実際には「粘膜が局所的に隆起した病変」を指し、良性・悪性の両方を含みます。胃に発生するポリープの90%以上は「過形成性ポリープ」または「胃底腺ポリープ」と呼ばれるもので、悪性化してがんになることは稀(まれ)です。いっぽうで、残りの10%以下は「腺腫」と呼ばれるポリープで、これは発生機序が異なり、がん化するリスクがあるため注意が必要です。
 胃のポリープは、大腸ポリープとは異なり、がん化の頻度が低いため、出血などを起こさない限りは必ずしも積極的に切除する必要はありません。しかし、内視鏡検査で形状や性質ががんと紛らわしい場合には、切除して病理検査をおこなうことが推奨されます。たとえば、早期胃がんの中には隆起性の形態を取るものがあり、腺腫との鑑別が難しい場合があります。また、ヘリコバクター・ピロリ感染に関連する過形成性ポリープは、除菌治療により縮小または消失することがあります。さらに、ピロリ菌除菌後やピロリ菌未感染胃、プロトンポンプ阻害薬(PPI)やカリウム競合型酸分泌抑制薬(P-CAB)の長期使用に伴って発生する胃底腺ポリープは、通常悪性化のリスクが低いとされていますが、ポリープが大きい場合や見た目が悪性を否定しえない場合、切除が検討されることもあります。
 胃のポリープは、多くの場合がん化のリスクが低いため、過度に神経質になる必要はありません。しかし、定期的な内視鏡検査でポリープの状態を確認し、腺腫や疑わしい病変が見つかった場合には適切な対応を取ることが重要です。

(執筆・監修:自治医科大学医学教育センター 医療人キャリア教育開発部門 特命教授/東北大学大学院医学系研究科 消化器病態学分野 准教授 菅野 武)
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