慢性胃炎〔まんせいいえん〕
慢性胃炎は、従来は内視鏡検査によって診断され、表層性胃炎と萎縮性胃炎に分類されてきました。
表層性胃炎では、胃粘膜表面に炎症による充血や櫛(くし)状の発赤がみられます。いっぽう、萎縮性胃炎では胃粘膜が薄くなり、血管が透けて見えることが特徴で、胃酸分泌が低下します。萎縮性胃炎は慢性胃炎の大部分を占め、高齢者に多く、胃がん発生のリスクと関連すると考えられています。
[原因]
慢性萎縮性胃炎のおもな原因は、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)の慢性的な感染であるとされています。また、自己免疫性胃炎も慢性萎縮性胃炎の一種として知られています。自己免疫性胃炎では、体部を中心とした胃粘膜の萎縮がみられ、抗内因子抗体との関連が確認されています。自己免疫性胃炎は、ビタミンB12欠乏による悪性貧血をひき起こすほか、胃の神経内分泌腫瘍(カルチノイド)の発生リスクを高めることが知られています。
[症状]
慢性胃炎の多くは基本的に無症状であり、内視鏡検査で偶然発見されることが一般的です。
表層性胃炎では、上腹部の不快感や鈍痛、胸やけ、時には腹部膨満感をうったえることもあります。いっぽう、萎縮性胃炎では自覚症状が乏しい場合が多いですが、長期的には消化機能の低下や胃がん発生リスクが高まる可能性があります。
自己免疫性胃炎の場合、貧血に伴う全身のだるさや息切れ、さらにはビタミンB12欠乏症による神経障害(例:手足のしびれ)などの症状があらわれることがあります。
[治療]
慢性胃炎の治療では、暴飲暴食、過度の飲酒、ストレスを避け、規則正しい生活を心掛けることが推奨されます。
慢性胃炎のおもな原因とされるヘリコバクター・ピロリ感染に対しては、除菌治療がおこなわれます。この治療は、胃がんリスクの低減にも寄与することが知られています。除菌成功後は、胃粘膜の状態が徐々に改善することが期待されますが、萎縮が進行している場合には、完全に回復しないことも少なくありません。ただし、除菌後も胃がんリスクが完全にゼロになるわけではありません。いっぽう、自己免疫性胃炎では、ビタミンB12欠乏症に対する治療として、定期的なビタミンB12の補充が必要です。腫瘍のリスクがあるため、いずれの慢性胃炎に対しても内視鏡検査による定期的な監視が重要です。
[注意]
慢性萎縮性胃炎は高齢者での発症頻度が増加するとされ、胃がん発生のリスクの一つと考えられています。そのため、慢性胃炎と診断された場合には、年に1回程度の定期的な内視鏡検査が推奨されます。検査の際には、必要に応じて胃粘膜組織を採取し、病理組織学的検査によって早期胃がんや神経内分泌腫瘍の発生を確認することが重要です。
(執筆・監修:自治医科大学医学教育センター 医療人キャリア教育開発部門 特命教授/東北大学大学院医学系研究科 消化器病態学分野 准教授 菅野 武)
表層性胃炎では、胃粘膜表面に炎症による充血や櫛(くし)状の発赤がみられます。いっぽう、萎縮性胃炎では胃粘膜が薄くなり、血管が透けて見えることが特徴で、胃酸分泌が低下します。萎縮性胃炎は慢性胃炎の大部分を占め、高齢者に多く、胃がん発生のリスクと関連すると考えられています。
[原因]
慢性萎縮性胃炎のおもな原因は、ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)の慢性的な感染であるとされています。また、自己免疫性胃炎も慢性萎縮性胃炎の一種として知られています。自己免疫性胃炎では、体部を中心とした胃粘膜の萎縮がみられ、抗内因子抗体との関連が確認されています。自己免疫性胃炎は、ビタミンB12欠乏による悪性貧血をひき起こすほか、胃の神経内分泌腫瘍(カルチノイド)の発生リスクを高めることが知られています。
[症状]
慢性胃炎の多くは基本的に無症状であり、内視鏡検査で偶然発見されることが一般的です。
表層性胃炎では、上腹部の不快感や鈍痛、胸やけ、時には腹部膨満感をうったえることもあります。いっぽう、萎縮性胃炎では自覚症状が乏しい場合が多いですが、長期的には消化機能の低下や胃がん発生リスクが高まる可能性があります。
自己免疫性胃炎の場合、貧血に伴う全身のだるさや息切れ、さらにはビタミンB12欠乏症による神経障害(例:手足のしびれ)などの症状があらわれることがあります。
[治療]
慢性胃炎の治療では、暴飲暴食、過度の飲酒、ストレスを避け、規則正しい生活を心掛けることが推奨されます。
慢性胃炎のおもな原因とされるヘリコバクター・ピロリ感染に対しては、除菌治療がおこなわれます。この治療は、胃がんリスクの低減にも寄与することが知られています。除菌成功後は、胃粘膜の状態が徐々に改善することが期待されますが、萎縮が進行している場合には、完全に回復しないことも少なくありません。ただし、除菌後も胃がんリスクが完全にゼロになるわけではありません。いっぽう、自己免疫性胃炎では、ビタミンB12欠乏症に対する治療として、定期的なビタミンB12の補充が必要です。腫瘍のリスクがあるため、いずれの慢性胃炎に対しても内視鏡検査による定期的な監視が重要です。
[注意]
慢性萎縮性胃炎は高齢者での発症頻度が増加するとされ、胃がん発生のリスクの一つと考えられています。そのため、慢性胃炎と診断された場合には、年に1回程度の定期的な内視鏡検査が推奨されます。検査の際には、必要に応じて胃粘膜組織を採取し、病理組織学的検査によって早期胃がんや神経内分泌腫瘍の発生を確認することが重要です。
(執筆・監修:自治医科大学医学教育センター 医療人キャリア教育開発部門 特命教授/東北大学大学院医学系研究科 消化器病態学分野 准教授 菅野 武)