腎硬化症〔じんこうかしょう〕

 腎硬化症はその名のとおり、腎臓がかたくなり腎機能が低下している状態です。腎硬化症は高齢化社会の進展に伴い、最近増加傾向にあるといわれています。
 高血圧が長期間続くと、糸球体の入り口の血管(輸入細動脈)が拡張したままになります。通常は全身の血圧に応じて輸入細動脈が拡張や収縮し、糸球体内部の血圧は一定に保たれますが、長い期間全身血圧が高いとこの調整機能が失われてしまうのです。
 その結果、高い圧にさらされた糸球体では、血管の壁がかたくなり、あるいは圧に耐えられなかった糸球体がつぶれてしまい、さらに糸球体周囲の組織が線維化して腎臓全体がかたくなります。このような状態が腎硬化症です。
 最初の症状は夜間に尿量がふえることです。たんぱく尿や血尿などをみとめることは少なく、腎機能の低下の速度も比較的ゆっくりしています。しかし下痢が長期間続くというように、脱水が起こった場合には急速に腎機能が低下することがあり、注意が必要です。また、顕性たんぱく尿を伴う場合も腎機能障害の進行が促進されます。
 腎硬化症による腎機能障害は心血管疾患を進行させると考えられています。そのため、腎機能障害の進行抑制やたんぱく尿の減少を目的に、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)を含む血圧降下薬を用いて、少なくとも130/80mmHg未満まで下げる必要があります。

(執筆・監修:医療法人財団みさき会 たむら記念病院 院長 鈴木 洋通)
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