エルシニア食中毒〔えるしにあしょくちゅうどく〕

 エルシニア属菌にはペストを起こすものもありますが、日本ではペストはありません。日本でみられるのは、おもにエルシニア・エンテロコリティカ(Yersinia enterocolitica)という菌による食中毒です。この菌は家畜やタヌキ、サルなどの野生動物が保有していて、汚染された肉や井戸水などを介して経口感染します。
 子どもでは嘔吐(おうと)や発熱、腹痛、下痢、粘血便などの食中毒症状を起こしやすいのが特徴です。潜伏期は1~10日と、比較的幅があります。
 症状は1週間ぐらいで自然に軽快することが多く、診断がつけばアミノ配糖体系抗菌薬などが使われます。
 成人では食中毒の型をとる場合と、腸間膜リンパ節炎や結節性紅斑(こうはん)などを呈する場合があります。

(執筆・監修:熊本大学大学院生命科学研究部 客員教授/東京医科大学微生物学分野 兼任教授 岩田 敏)
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