ブドウ球菌食中毒〔ぶどうきゅうきんしょくちゅうどく〕 家庭の医学

 ブドウ球菌は化膿(かのう)性の病変や肺炎敗血症などの感染症を起こす代表的な菌ですが、黄色ブドウ球菌はコアグラーゼ、ロイコシジン、エクソフォリアチン、エンテロトキシンなどの毒素を産生します。
 食物がエンテロトキシン産生黄色ブドウ球菌で汚染された場合、食品中でエンテロトキシンが産生され、これを食べることにより激しい食中毒症状が出ます。これは感染による症状ではなく、毒素による症状で、吸収されるとすぐ症状が出るのが特徴です。
 したがって、潜伏期は1~4時間ときわめて短く、発熱もなく、抗菌薬は効きません。また、この毒素は熱に強いので、食品を加熱してブドウ球菌を殺菌しても食中毒は防げないことになります。
 黄色ブドウ球菌は、健康人の皮膚や鼻腔(びくう)などにもしばしば存在するため、手などに付着していることも多く、手でつくったおむすびや弁当を長時間放置しておくと毒素がふえ、食中毒の原因となります。

(執筆・監修:熊本大学大学院生命科学研究部 客員教授/東京医科大学微生物学分野 兼任教授 岩田 敏)
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