腸炎ビブリオ食中毒〔ちょうえんびぶりおしょくちゅうどく〕 家庭の医学

 コレラ菌の仲間の腸炎ビブリオ菌(Vibrio parahaemolyticus)による食中毒です。この菌は陸地に近い海域に分布していて、夏季に増加します。このため、近海の海産物による食中毒が夏に増加します。すしなどの生鮮魚介類や、生の加工品によることが多いようです。
 潜伏期は8~20時間で、発熱、吐き気・嘔吐(おうと)はやや軽いものの、腹痛や下痢症状が強くあらわれます。しかし、大部分は2~3日で軽快し、大事に至ることはまれです。半日~1日以内に海産物を食している場合は、腸炎ビブリオ食中毒である可能性が高く、比較的原因はつきとめやすい感染症です。カンピロバクター食中毒赤痢とまちがえられることもあります。
 脱水に対する補液を必要とする場合が少なくありません。抗菌薬としてはキノロン系やテトラサイクリン系が有効で、多くは自然軽快します。

(執筆・監修:熊本大学大学院生命科学研究部 客員教授/東京医科大学微生物学分野 兼任教授 岩田 敏)
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