条虫症〔じょうちゅうしょう〕

 条虫は一般的にサナダ虫と呼ばれ、頭節に続いて多数の片節が連なった長く、平べったいひも状の寄生虫です。腸管に寄生するおもな条虫類には日本海裂頭条虫、大複殖門条虫、無鉤(むこう)条虫があります。長さ数メートルにも及ぶ大きな寄生虫ですが、幼虫は直径2mmほどの小さな袋の中に潜んでいます。
 日本で特によくみられるのが、日本海裂頭条虫です。幼虫が寄生しているサクラマスやカラフトマスを生で食べることによって感染します。初夏に感染者が多くみられます。
 大複殖門条虫症はおもに東海から西の地方にみられ、イワシの生食によって感染すると考えられています。
 無鉤条虫症には、牛肉を生または半調理で食べたときに感染します。無鉤条虫はアフリカ、南米、東欧に多くみられ、近年、海外で感染して国内に持ち込むケースがふえています。
 豚肉に寄生している幼虫を取り込んだ場合には、有鉤(ゆうこう)条虫症になり、成虫は腸管に寄生し、幼虫が脳など体中にばらまかれます。豚を食べる国に旅行したら、豚肉はきちんと加熱調理するようにしてください。

[症状]
 日本海裂頭条虫、大複殖門条虫、無鉤条虫などの条虫類の成虫が腸管内に寄生している場合、主として腹痛、下痢、腹部膨満(ぼうまん)感などの消化器症状がみられます。しかし、自覚症状がなく、虫体が肛門から出てはじめて気づくことが多いです。

[治療][予防]
 日本海裂頭条虫症の場合、長く片節が連なって肛門から垂れ下がるのが特徴です。無鉤条虫は片節が1個ずつ肛門から出てきます。出てきた虫の形態と虫卵検査によって診断されます。出てきた虫は、捨てずに医師に見せてください。そして、1~3カ月以内のサクラマス、牛肉などの生食歴、海外渡航歴を医師に話してください。
 感染予防はサクラマスや牛肉などを生で食べないことです。

(執筆・監修:自治医科大学 名誉教授 松岡 裕之)
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