鉤虫症〔こうちゅうしょう〕 家庭の医学

 鉤虫は約1cmの白い小さな虫で、頭部に鋭い歯をもっているのが特徴です。日本では非常に少なくなりましたが、熱帯・亜熱帯の農村地域では感染がみられます。便のなかに出た虫卵は土の上で発育して幼虫となります。野菜などについている幼虫を食べて感染したり、土の上をはだしで歩いていて皮膚から幼虫が入ることもあります。

[症状]
 たくさんの幼虫が皮膚から入った場合に、その部分に点状の皮膚炎が起こります。また、たくさんの幼虫がついている若菜の浅漬けを食べたあとでは吐き気を起こし、のどのかゆみやせきが続くことがあります。
 鉤虫は成虫になると鋭い歯を小腸の粘膜に潜り込ませて寄生し、1日に0.1~0.4mLの血液を吸って栄養にしています。そのため寄生された人は貧血になり、スプーンのように反りかえった白い爪になります。

[治療][予防]
 便の検査で、虫卵が見つかったときは駆虫します。治療には、駆虫とともに貧血の治療が必要なこともあります。幼虫は野菜の葉についていることが多いので、葉野菜は流水でていねいに洗うことが大切です。皮膚からの侵入を防ぐために、畑などをはだしで歩かないようにしましょう。

(執筆・監修:長野県飯田保健福祉事務所 所長 松岡 裕之)
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