蟯虫症〔ぎょうちゅうしょう〕 家庭の医学

 蟯虫は、約1cmの白い虫で、尾端(びたん)がとがっているので、pinworm(ピンのようにとがった虫)といわれています。感染者は小学校低学年以下の子どもとその父母に多く、家庭内など集団感染が多いのも特徴です。
 雌虫は夜間、肛門にはい出てきてその周囲にいっきに産卵し、そこで死亡します。人は、肛門のかゆみをかいた手指についた虫卵や、布団や床に落ちた虫卵を口に入れて感染します。
 蟯虫の成育は非常に早く、虫卵が口に入ってから2~3週間後には盲腸に寄生して成虫になり、7~8週間後には産卵します。


[症状]
 蟯虫は肛門にはい出てきて産卵するため、肛門や会陰(えいん)部にかゆみが起きたり湿疹(しっしん)がみられます。
 長期化することによって、子どもは不機嫌になったり、不眠、夜尿(やにょう)、かんしゃくなどの神経症を起こします。成虫が虫垂や腟(ちつ)などに侵入して炎症を起こすこともあります。
 成人ではほとんど症状はありません。

[治療][予防]
 虫卵検出には、朝起きてすぐセロハンテープを肛門に貼り付けて顕微鏡で検査します。同居している人にも感染しますので、虫卵が見つかったら、家族全員で駆虫しましょう。
 蟯虫卵が布団や床などに落ちて感染源となるので、感染予防には、布団の日光干し、下着の着替えや洗濯、部屋の掃除をこまめにしましょう。また、手指をよく洗い、爪を短く切っておくことも大切です。

(執筆・監修:長野県飯田保健福祉事務所 所長 松岡 裕之)
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