クリプトスポリジウム症〔くりぷとすぽりじうむしょう〕 家庭の医学

 1996年埼玉県越生町で町営水道の汚染によって、住民の約70%にあたる9000人がクリプトスポリジウムによる下痢症を起こしたことがあります。2004年また2014年に長野県のスポーツ施設・宿泊施設に合宿に来ていた他県の小学生らが200人規模で下痢を起こしたことがあります。
 クリプトスポリジウムは、人のほかウシ、イヌ、ネコ、ネズミなどにも感染します(人獣共通感染症)。人の腸粘膜の微絨毛(びじゅうもう)内で増殖し、下痢便中には感染性のオーシスト(休止状態の原虫)が排出されます。オーシストは直径約5μmとかなり小さいです。
 オーシストを含んでいる生水や生野菜などの飲食物を口にして感染します。クリプトスポリジウムは塩素消毒では殺滅できないので、紫外線照射など特別の処理が必要です。潜伏期間は4~10日間で、突然腹部の痛みとともに大量の水様性下痢が始まります。下痢は2~12日間持続しますが、通常は治療をおこなわなくても下痢は1~2週間で自然に治ります。しかし、エイズ罹患(りかん)者や免疫機能が低下した人では、下痢が長びいて死亡することもあります(日和見感染症)。

【参照】感染症:クリプトスポリジウム症

(執筆・監修:自治医科大学 名誉教授 松岡 裕之)
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