イヌ糸状虫症〔いぬしじょうちゅうしょう〕 家庭の医学

 イヌ糸状虫(イヌフィラリア)はイヌの肺動脈に寄生し、産んだ仔虫(こむし:ミクロフィラリア)が血液中にまかれます。感染したイヌを蚊が吸血したときにミクロフィラリアを取り込みます。ミクロフィラリアは蚊の体内で数日かけて成長し、感染幼虫になります。その蚊に人が刺されると、幼虫が侵入して血流に乗り、肺へ達することがあります。虫はここで死にますが、虫を取り囲んだ組織が胸部X線検査で銭形陰影(コインリージョン)として発見され、肺がんの疑いで手術されます。また、幼虫が蚊に刺された皮膚の下で死ぬと、その部位でこぶを形成することもあります。
 飼い犬にフィラリア予防薬を与えることでイヌフィラリア症が減少したため、人への感染も減少しています。

(執筆・監修:自治医科大学 名誉教授 松岡 裕之)
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