妊娠の診断と診察

■妊娠の診断
 受精が成立し、子宮内に着床した受精卵周囲の絨毛(じゅうもう)から絨毛性ゴナドトロピンが分泌され、母体の尿中に排泄(はいせつ)されます。これを検出するのが“妊娠反応”といわれるものです。現在はこの原理を利用した“妊娠診断薬”が市販されており、妊娠4週から診断が可能です。さまざまな製品がありますので、正確に操作をおこなってください。早朝尿(朝いちばんの尿)がもっとも敏感です。
 妊娠反応が陽性であっても、正常妊娠とは限りません。流産、異所性妊娠(子宮外妊娠)、胞状奇胎などの異常妊娠でも陽性に出るのですから、陽性が出たら病・医院で必ず受診しましょう。
 また、陰性でも、操作が誤っている可能性や、たまたま反応が少なくて陰性と判断されてしまうことがあるので、予定月経が来ないなど、妊娠が疑われる場合はやはり受診することが必要です。
 基礎体温表を記録している場合は、妊娠すると高温相(通常は14日間)が長く続きます。3週以上続けば妊娠と推定できます。また排卵日もほぼわかりますので、分娩(ぶんべん)予定日をかなり正確に診断することができます。

■初診の受けかたと問診メモ
 妊娠ではないかと思ったら、産婦人科を受診します。その際に健康保険証は必ず持参しましょう。正常の妊娠では保険は使えませんが、異常妊娠の場合は使うことができます。
 また、産婦人科では必ず内診(下着を脱いで受ける内性器・外性器の触診)があるので、清潔にして、ゆったりとしたスカートのような服装がよいでしょう。
 診察の前に問診があるのですが、最近ではあらかじめ問診表を記入するところも多くなっています。たずねられるのはだいたい次のようなことです。
 1.月経について…最終月経開始日、最終月経は通常どおりの月経であったか、月経周期、初経年齢、月経時の障害(痛みなど)、不正出血の有無。
 2.結婚・妊娠・出産について…結婚年数、いままでの妊娠の回数、流産、人工中絶、出産の回数と異常の有無。
 3.いままでにかかった大きな病気や手術…心臓病、腎臓病、肝臓病、高血圧などの内科系のほかに、性感染症や子宮内膜症、子宮筋腫(きんしゅ)など婦人科の病気も含まれます。
 4.その他…子宮がん検診の有無。ありならその結果と、薬のアレルギーや喫煙飲酒習慣ほか。
 5.夫・家族について…夫の健康状態や遺伝的な病気の有無など。
 問診のなかには隠しておきたいこと、夫や家族に知られたくないこともあるでしょう。医師には守秘義務がありますので、本人以外の人に秘密が漏れることはありません。場合によっては検査を追加したり、治療が必要なこともありますので、あとあと困らないためにも正直に話したほうがよいのです。

(執筆・監修:恩賜財団 母子愛育会総合母子保健センター 愛育病院 産婦人科 部長 竹田 善治)