妊娠とわかったら
■妊娠の届け出と母子健康手帳
妊娠が確定したら、住所のある役所(区市町村およびその出張所)か保健所・保健センターに行き、必要な事項(氏名・予定日など)を記入すればもらえます。このとき届け出当日の妊娠週数と分娩予定日、診断を受けた病院名や医師名を控えておき、個人番号(マイナンバー)がわかるカードと身元を確認できるもの(運転免許証やパスポートなど)をいっしょに持参します。
母子健康手帳(母子手帳)とは妊娠中の経過、分娩(ぶんべん)の記録、赤ちゃんの発達や健康の記録ができる手帳です。赤ちゃんの出生届のときも必要ですし、子が思春期ころまでおこなうさまざまの予防接種を記録するところもあります。
子ども1人に1冊ですから、双胎(ふたご)では2冊になります。
母子手帳には、検査や健診料が無料となる券やその他いろいろな資料が付録としてついています。妊娠中の注意や産後について、さらに育児に関して役立つことも多いので、よく読みましょう。母子手帳は医療機関が記入するばかりでなく、自分で記入するところもあるのできちんと記入するようにしましょう。
■里帰り分娩
妊婦健診は近くの病・医院で受け、分娩は実家近くの病・医院で出産するのが里帰り分娩です。親がいて安心、からだも楽、上の子の世話もしてもらえるなど、よい点もありますが、親に頼りすぎて夫との関係が希薄になったり、自宅に戻ってから苦労するなどのマイナス面もあります。出産をする病・医院によっては、分娩予約が必要な施設や、1回はあらかじめ診察を受けることが求められることもあるのです。また、里帰りする時期は遅くとも妊娠9カ月末までには帰りましょう。10カ月に入ると飛行機の場合は診断書が必要になるなどの制約が出ますし、長時間の旅行は負担が大きくなります。
健診を受けている医師には、前もって里帰り分娩する旨を伝えておきましょう。そうすれば最後の健診のとき快く紹介状を書いてくれます。
■初診時の内診と超音波検査
内診は、妊娠時には欠かせない診察法です。実際には、まず腟(ちつ)鏡を使って、流産徴候である出血や、分泌物の異常がないか否かを確認し、子宮口のようすを観察します。子宮がん検査もこのときに細胞を採取しておこないます。次に双手診といって、医師が腟の中の指と腹壁からの手指で子宮の大きさ、かたさ、付属器(卵巣と卵管)をはさむようにして異常がないかを調べます。このとき子宮口が正常に閉じているかも診ているのです。妊娠の場合は次に、経腟超音波検査をおこない、子宮内に羊水腔(ようすいくう:胎嚢〈たいのう〉)、胎児、胎児心拍の有無を調べ、心拍があれば妊娠の診断ができるのです。流産や異所性妊娠(子宮外妊娠)などの異常妊娠か否かもわかります。
内診はけっして痛くはありませんが、緊張してからだをかたくしたり、力を入れたりすると、正確に診断することができません。深呼吸をしながら肩やからだ全体の力を抜くようにしましょう。
初診で、最近若い人にふえている子宮がん検査をおこなう病院が多くなっています。
■分娩予定の決めかた
最終月経開始日の月日の月数から3を引いて、日数に7を足すと分娩予定日となります。たとえば最終月経開始日が、10月15日なら10-3=7月、15+7=22日となるわけです。1月、2月、3月は12を足して13月、14月、15月と考え、30日、31日以上になる場合は翌月に換算します。たとえば、1月25日なら13-3=10月、25+7=32日で10月32日つまり11月1日と計算します。
ただこれは、月経周期が28日型の人に用いられるので、35日型の人ではそれより1週遅くなります。月経不順の人は、計算できないことも多いのですが、いまは超音波検査で妊娠8~10週の間に胎児の座高をはかり、予定日を決めることが一般的です。
■お産の病・医院選び
個人医院、産院、総合病院、大学病院、周産期センターなど、さまざまな施設があります。母体が健康で正常な妊娠経過であれば、基本的にどこを選んでもよいのですが、母体に内科合併症があれば専門医がいる総合病院など、早産・多胎など分娩にリスクが予想される場合は新生児専門医のいる周産期センターが望ましいことになります。
個人医院は、いつでも同じ医師が診察から分娩まで担当しますが、万が一突発的な異常が起こった場合に、1人の医師では対応が十分できない場合があります。最近では、緊急の場合は近隣の周産期センターなどに搬送するシステムができていますので、それを確認しておくとよいでしょう。
いっぽう総合病院、大学病院などは、診察医も毎回代わり、分娩時はまたほかの医師といった欠点もありますが、急変などが起こった場合も対処が可能です。
自分が望むお産の方法、たとえば夫の立ち会い分娩、無痛分娩、計画分娩などは、施設によりおこなうところとおこなわないところがあります。また自分のからだの条件、つまり合併症の有無によっても変わります。そのほかに産後のことも考えてください。母乳についての相談が受けられるか、小児科はどこにかかるかなど。また最後に費用についてですが、一般的に国公立病院は安め、個人の施設で設備などのよいところは高めの傾向です。
通院の便を考え、あまり遠くないところで、家族、知り合いの評判を聞いて決める人が多いようです。
また、インターネットなどでの検索をしてもよいのですが、スタッフの人柄や雰囲気などはわからないので、できれば自分で直接出向いて調べましょう。
(執筆・監修:恩賜財団 母子愛育会総合母子保健センター 愛育病院 産婦人科 部長 竹田 善治)
妊娠が確定したら、住所のある役所(区市町村およびその出張所)か保健所・保健センターに行き、必要な事項(氏名・予定日など)を記入すればもらえます。このとき届け出当日の妊娠週数と分娩予定日、診断を受けた病院名や医師名を控えておき、個人番号(マイナンバー)がわかるカードと身元を確認できるもの(運転免許証やパスポートなど)をいっしょに持参します。
母子健康手帳(母子手帳)とは妊娠中の経過、分娩(ぶんべん)の記録、赤ちゃんの発達や健康の記録ができる手帳です。赤ちゃんの出生届のときも必要ですし、子が思春期ころまでおこなうさまざまの予防接種を記録するところもあります。
子ども1人に1冊ですから、双胎(ふたご)では2冊になります。
母子手帳には、検査や健診料が無料となる券やその他いろいろな資料が付録としてついています。妊娠中の注意や産後について、さらに育児に関して役立つことも多いので、よく読みましょう。母子手帳は医療機関が記入するばかりでなく、自分で記入するところもあるのできちんと記入するようにしましょう。
■里帰り分娩
妊婦健診は近くの病・医院で受け、分娩は実家近くの病・医院で出産するのが里帰り分娩です。親がいて安心、からだも楽、上の子の世話もしてもらえるなど、よい点もありますが、親に頼りすぎて夫との関係が希薄になったり、自宅に戻ってから苦労するなどのマイナス面もあります。出産をする病・医院によっては、分娩予約が必要な施設や、1回はあらかじめ診察を受けることが求められることもあるのです。また、里帰りする時期は遅くとも妊娠9カ月末までには帰りましょう。10カ月に入ると飛行機の場合は診断書が必要になるなどの制約が出ますし、長時間の旅行は負担が大きくなります。
健診を受けている医師には、前もって里帰り分娩する旨を伝えておきましょう。そうすれば最後の健診のとき快く紹介状を書いてくれます。
■初診時の内診と超音波検査
内診は、妊娠時には欠かせない診察法です。実際には、まず腟(ちつ)鏡を使って、流産徴候である出血や、分泌物の異常がないか否かを確認し、子宮口のようすを観察します。子宮がん検査もこのときに細胞を採取しておこないます。次に双手診といって、医師が腟の中の指と腹壁からの手指で子宮の大きさ、かたさ、付属器(卵巣と卵管)をはさむようにして異常がないかを調べます。このとき子宮口が正常に閉じているかも診ているのです。妊娠の場合は次に、経腟超音波検査をおこない、子宮内に羊水腔(ようすいくう:胎嚢〈たいのう〉)、胎児、胎児心拍の有無を調べ、心拍があれば妊娠の診断ができるのです。流産や異所性妊娠(子宮外妊娠)などの異常妊娠か否かもわかります。
内診はけっして痛くはありませんが、緊張してからだをかたくしたり、力を入れたりすると、正確に診断することができません。深呼吸をしながら肩やからだ全体の力を抜くようにしましょう。
初診で、最近若い人にふえている子宮がん検査をおこなう病院が多くなっています。
■分娩予定の決めかた
最終月経開始日の月日の月数から3を引いて、日数に7を足すと分娩予定日となります。たとえば最終月経開始日が、10月15日なら10-3=7月、15+7=22日となるわけです。1月、2月、3月は12を足して13月、14月、15月と考え、30日、31日以上になる場合は翌月に換算します。たとえば、1月25日なら13-3=10月、25+7=32日で10月32日つまり11月1日と計算します。
ただこれは、月経周期が28日型の人に用いられるので、35日型の人ではそれより1週遅くなります。月経不順の人は、計算できないことも多いのですが、いまは超音波検査で妊娠8~10週の間に胎児の座高をはかり、予定日を決めることが一般的です。
■お産の病・医院選び
個人医院、産院、総合病院、大学病院、周産期センターなど、さまざまな施設があります。母体が健康で正常な妊娠経過であれば、基本的にどこを選んでもよいのですが、母体に内科合併症があれば専門医がいる総合病院など、早産・多胎など分娩にリスクが予想される場合は新生児専門医のいる周産期センターが望ましいことになります。
個人医院は、いつでも同じ医師が診察から分娩まで担当しますが、万が一突発的な異常が起こった場合に、1人の医師では対応が十分できない場合があります。最近では、緊急の場合は近隣の周産期センターなどに搬送するシステムができていますので、それを確認しておくとよいでしょう。
いっぽう総合病院、大学病院などは、診察医も毎回代わり、分娩時はまたほかの医師といった欠点もありますが、急変などが起こった場合も対処が可能です。
自分が望むお産の方法、たとえば夫の立ち会い分娩、無痛分娩、計画分娩などは、施設によりおこなうところとおこなわないところがあります。また自分のからだの条件、つまり合併症の有無によっても変わります。そのほかに産後のことも考えてください。母乳についての相談が受けられるか、小児科はどこにかかるかなど。また最後に費用についてですが、一般的に国公立病院は安め、個人の施設で設備などのよいところは高めの傾向です。
通院の便を考え、あまり遠くないところで、家族、知り合いの評判を聞いて決める人が多いようです。
また、インターネットなどでの検索をしてもよいのですが、スタッフの人柄や雰囲気などはわからないので、できれば自分で直接出向いて調べましょう。
(執筆・監修:恩賜財団 母子愛育会総合母子保健センター 愛育病院 産婦人科 部長 竹田 善治)