妊娠中のからだの変化 家庭の医学

 子宮は妊娠前、鶏卵大くらいで、重さは約60~70g程度ですが、妊娠末期には重さは約800~1000gに増大します。子宮腔(くう)容積は2mLから4000~5000mLと2000~2500倍にも変化します。それに伴って腹腔内のほかの臓器は圧迫され、さまざまな変化が起こりますが、そのほか全身でも大きな変化があります。

■皮膚の変化
・色素沈着…顔、乳頭、外陰部、腋窩(えきか)などに色素沈着が起こり、色が濃くなります。腹壁の中央に縦の黒い線ができたりもしますが、出産後は徐々に消えていきます。
・妊娠線…腹壁、乳房、大腿(だいたい)などに赤紫色の線がいくつもできます。皮膚の急進な伸展による皮下組織の断裂と考えられています。出産後は色がとれて白い細い線となって目立たなくなります。
 そのほか、皮下脂肪が腹壁、乳房、臀部(でんぶ)、大腿で増加します。皮膚の状態も変化し、かぶれやかゆみが出やすくなることもあります。

■血液の変化
 胎児を育てるため徐々に増加して、酸素、栄養、老廃物を運びます。妊娠末期には妊娠前の1.4倍になります。

■心臓と血液の変化
 増加した血液を子宮内の胎児、胎盤に送り込むため、妊娠前のおよそ1.5倍の負担が心臓にはかかります。心拍数も多くなり動悸(どうき)、息切れも出やすくなります。また、大きくなった子宮に血液が集中し、下半身から血液が心臓に戻る量が減るため、頭にいく血液量が減少し、脳貧血、立ちくらみが起こりやすくなったり、仰向けに寝ると気分がわるくなったりします。

■胃腸の変化
 胃腸のはたらきが低下するのは、ホルモンの変化によるものです。便秘や胸やけが起こりやすくなり、「つわり」は一般に妊娠5~7週ころよりあらわれ、14~16週ころになくなることが多いです。

■腎臓、膀胱の変化
 胎児から出た老廃物の排泄(はいせつ)のために妊娠前の約1.5倍のはたらきをします。ホルモンの影響で尿管(腎臓から膀胱〈ぼうこう〉へ尿を送る管)が拡張し、はたらきが低下するので尿の流れがわるくなり、腎臓がはれたり炎症を起こしやすくなります。膀胱も子宮により圧迫され頻尿になり、膀胱炎も起こりやすくなります。

■関節の変化
 子宮が大きくなると、背骨はうしろに反るような姿勢となり、腰痛の原因になりやすいのです。また骨盤の関節がゆるむことも知られています。

(執筆・監修:恩賜財団 母子愛育会総合母子保健センター 愛育病院 産婦人科 部長 竹田 善治)
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