加齢と免疫
ヒトの免疫は成長・加齢とともに変化します。
誕生直後の乳児は、抗体をまだ十分には自前でつくることができません。しかし、胎内にいるとき、母親からさまざまな抗体(IgG)を胎盤を通して受け取っています。母親がそれまでに体験した感染症に対するほとんどすべての免疫抗体が含まれているので、乳児はさまざまな細菌やウイルスに抵抗できる免疫を備えています。さらに母乳、特に初乳には成乳の10~20倍の分泌型の抗体(IgA)が含まれており、IgAが気道や腸管の粘膜の表面で防御して感染から守ってくれます。細菌やウイルスだけでなく、アレルギーのもとになるような異物が吸収されるのも防ぎます。
母親からの抗体は、生後半年のうちに徐々に減っていきます。生後3カ月以降にかぜなどをひきやすくなるのはこのためです。その後外界に触れるなかで徐々に血液中の抗体はふえてきますが、成人とほぼ同じになるのは10歳以降です。
成人となったあと、血液中の抗体の量はあまり変化しませんが、免疫の調節や腫瘍免疫に重要な役割を果たす白血球(Tリンパ球やNK細胞)の数やはたらきは、加齢に伴い徐々に低下します。加齢とともにがんや自己免疫疾患がふえるのは、それがおもな原因と考えられています。
アトピー性の素因をもつ人では、乳児期に卵や牛乳などの食物で湿疹や
アトピー性皮膚炎が悪化したり腹痛・下痢をくり返し、幼児期になると
アレルギー性鼻炎や
ぜんそくになり、思春期以降もぜんそくや鼻炎が残ったりぜんそくが再発したりして、ずっとアレルギー症状に悩まされ続けることがあります。このように、年齢によりアレルギー症状がかたちを変えながらあらわれる現象をアレルギーマーチといいます。
(執筆・監修:
帝京大学ちば総合医療センター 第三内科〔呼吸器〕 教授 山口 正雄)