血液の病気

コラム

輸血と血液型

 重度の貧血で症状がみられる場合や、外傷や手術による出血が多い場合やひどい場合、あるいは血液の病気で貧血や血小板減少、血液の凝固異常などが起きてしまっている患者さんには、赤血球、血小板、血漿など、その人に不足している血液の成分を輸血します。
 輸血は現代医学においてもなくてはならない治療法の一つです。しかし、他人の血液をからだに入れることで、血液中に含まれていたウイルスなどの病原体による感染症の伝播や、患者さん自身のからだの成分と異なるものが入ることによる異常な免疫反応などの副作用の心配もあるために、事前に自分の血液を採取し、保存しておいて手術の際に用いる自己血輸血もさかんにおこなわれるようになりました。
 わが国における輸血血液はすべて献血に依存していますが、それらの血液は現在使用できるもっとも鋭敏な検査法で、B型、C型肝炎ウイルス、エイズウイルスなどのウイルス検査をおこなって選別しており、輸血後のウイルス感染症発症の危険性はいちじるしく少なくなっているものの、100%安全とはいえません。
 輸血をする際は、免疫学的に安全かどうか確認することが大切です。そのためには献血血液と患者さんの血液型を一致させることが必要です。血液型とは、赤血球の表面に存在する物質であり、すべての人はA型、B型、O型、AB型に分類されます。ABO式の血液型のほかにもRh式血液型や、そのほかの血液型でヒトの血液を分類し、輸血用血液の選択をすることもあります。日常の臨床では、輸血用血液と患者さんの血液をまぜ合わせ、その適合を調べる交差適合試験を必ずおこなってから輸血をすることにしています。
 ABO式の血液型の分布は、わが国ではA型37.7%、B型21.2%、O型29.5%、AB型11.6%と報告されています。Rh式の血液型についてはABO式血液型とは別に遺伝して存在し、日本人ではRh(-)は1~2%といちじるしく少なく、白人種の15%と対照的です。Rh(-)の人がRh(+)の人の血液を輸血されると、第1回目の輸血のときは問題ありませんが、その輸血によってRh因子に対する抗体ができ、それ以後Rh(+)の人の血液を輸血されると激しい反応が起こって危険な状態になります。したがって、Rh(-)の人ははじめからRh(-)の血液を輸血する必要があるのです。
 また、Rh(-)の母親がRh(+)の子どもを妊娠したときは、母親にRh因子に対する抗体ができ、それが胎児に入って新生児の血球を破壊するような事態も起こりえます。このときは、生後すぐに交換輸血をおこなうことになります。Rh式の血液型はこのようにABO式血液型と同様、非常に重要な血液型です。
 輸血の副作用は大別すると、即時型と遅延型があります。即時型は輸血中、または直後にあらわれるもので血液型が適合していない場合では腰の痛み、さむけ、発熱、ショックなどがみられます。不適合輸血でなくとも、呼吸困難、じんましん、悪寒、発熱などがみられることは少なくありません。遅延型としては数カ月後に輸血後肝炎など輸血によるウイルス、その他病原体の感染が顕在化してくることがあります。

■輸血の安全性
 ヒトの血液を生に近い状態で使用するため、輸血は細菌やウイルスなどの感染の危険に悩まされてきました。輸血の安全性を高めるために、わが国では売血制度を廃止し、日本赤十字社が国民の善意の献血によりすべての輸血用血液製剤を確保しています。また、ウイルスの核酸を増幅して検査するなどの最新の検査技術も応用し、エイズウイルス、B型肝炎、C型肝炎などの検査をおこなうようになり安全性は飛躍的に向上しました。
 しかし、感染のごく早期に献血された血液では、それでも検査の精度の関係で検出できず検査をすり抜けてしまうことがあります。輸血には常に感染などの危険を排除しきれないということは知っておくべきことです。
 こうしたことから、現在では輸血の必要性と危険性に対する患者さんへの説明とその承諾(インフォームド・コンセント)が輸血をおこなうための必要条件とされています。安全な血液を確保するため、健康な国民の献血が求められていますが、検査目的での献血はおこなってはいけません。