2024年春卒業予定の大学生らの就職活動で、面接など企業の採用選考活動が1日、解禁された。新型コロナの影響が和らぎ、1次面接から対面で行う企業が増える一方、人手不足感の強まりで人材獲得競争も激化。民間調査では、すでに7割超の学生らが内定、内々定を得ており、政府が定めた採用ルールは一段と形骸化が進んでいる。
 東京電力グループは昨年同様、対面とオンラインを併用するが、今年は対面が主体。電力の安定供給に向け原発の再稼働が課題となる中、「原発の現場を担う人材」(担当者)ら新卒採用人数を前年の約570人から約650人に増やす。
 同じく併用の第一生命保険でも、対面の面接が増えたという。東京都千代田区の本社で同日、マスクなしで面接に臨んだ大学院生の小野寺覇人さんは、「やりがいや、転勤が少ないことを(志望理由として)重視した」と緊張気味に語った。
 これに対し、伊藤忠商事はオンラインでの1次面接を継続。担当者は「多くの学生に会うには効果的。地方の学生にもチャンスになる」と強調する。全日本空輸も1次面接をオンラインで実施。4年ぶりに客室乗務員の採用を再開し、新卒採用を前年の約7倍の610人程度に増やす計画で、同社は「学生の関心は高い」と期待する。
 リクルートの就職みらい研究所によると、5月15日時点で内定や内々定を得た学生は72.1%と、前年同時期に比べ6.7ポイント上昇した。学生優位の「売り手市場」が続き、解禁日前から事実上の選考活動を行う企業も多く、「解禁日を守っていては優秀な人材が確保できない」(大手メーカー)との声が上がる。その一方、「就職活動の長期化につながりかねず、留学や学業などに影響する」(別のメーカー)との懸念も出ている。 (C)時事通信社