人は寝ないと頑張れない
意識の改革を―睡眠不足症候群
睡眠は、食事や排せつとともに、人間が生きていくために欠かせない。それにもかかわらず、寝る間を惜しんで仕事や勉強に励むことが成果につながると思い込んでいる人もいる。東京ベイ・浦安市川医療センター(千葉県浦安市)最高経営責任者(CEO)の神山潤医師は「『寝ないで頑張る』は大きな間違い。眠気は体が発する必死の声です。まず、大人が睡眠の大切さをしっかりと認識する必要があります」と強調する。
午前中に眠気を感じたら、睡眠不足かもしれない
▽注意力や集中力が低下
睡眠不足症候群は、正常な覚醒状態を維持するための睡眠時間が取れない状態を指す。神山医師がある講演会で、子どもたちに自分は寝不足だと思うかを尋ねたところ、大半が勢いよく手を挙げたので驚いたという。「『寝ないで頑張った』と言うと、大人が褒めてくれるからです。子どもの頃から睡眠不足を自慢していては、スポーツや学業でベストパフォーマンスを発揮できるわけがありません」と指摘する。これは、大人たちが「たかが睡眠」と睡眠不足を軽く捉えているからにほかならない。
睡眠不足は、疲労だけでなく、食欲不振や胃腸障害といった
を招く。注意力や集中力をそぎ、落ち着きや協調性もなくす。「前頭葉の働きが鈍り、判断力や理性が失われ、過食することもあります。認知機能との関連も指摘されています」と神山医師。
▽睡眠不足の自覚を
睡眠不足を知るには、午前中の眠気が目安となる。人間は午前4時ごろと午後2時ごろに眠気を感じやすいといわれ、午前中は眠くならないようにできているという。「必要な睡眠時間は人により違うので、何時間眠れば午前中しっかりと活動できるかを早く見つけることが重要です」と神山医師は助言する。休日の起床時間が極端に遅い人がいるが、「日頃の睡眠不足を休日に取り返そうとしても、脳や体が機能回復するための睡眠にはなりません」と注意を促す。
大切なのは自分が睡眠不足だということを早く自覚し、普段から10分でも15分でも睡眠時間を多く取るよう心掛けることだという。「睡眠は決して怠けることではありません。体や心と密接につながっていることを、ぜひ知ってください」と神山医師は訴えている。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/04/14 17:00)