イタリア・IRCCS San Raffaele Scientific InstituteのGiacomo Monti氏らは、敗血症に対するメロペネムの持続投与は間欠投与と比較して転帰を改善するかを検討するため、敗血症または敗血症性ショックの重症患者607例を対象とした二重盲検ランダム化比較試験(RCT)を実施した。その結果、メロペネムの持続投与と間欠投与で、敗血症患者における耐性菌出現率や死亡率に有意差はなかったとJAMA2023年6月16日オンライン版)に報告した。

クロアチア、イタリア、カザフスタン、ロシアのICUで重症敗血症患者を選別

 メロペネムは広く使用されているβ-ラクタム系抗菌薬である。時間依存性で、血中濃度が細菌の最小発育阻止濃度(MIC)を上回る時間が長いほど効果が増すという特徴を持つ。

 β-ラクタム系抗菌薬は一般的に間欠投与されるが、薬物動態学的研究により、MICを上回る時間を最大にする延長投与により有効性が向上する可能性が示唆されている。また、システマチックレビューおよびメタ解析では、β-ラクタム系抗菌薬の持続または延長投与が敗血症患者の死亡率を低下させる可能性も示されている。

 そこでMonti氏らは今回、敗血症に対するメロペネム持続投与の有効性を検討する二重盲検RCTを実施した。

 対象は、2018年6月5日〜22年8月9日に4カ国(クロアチア、イタリア、カザフスタン、ロシア)26病院の31集中治療室(ICU)で、担当医からメロペネムを処方された敗血症または敗血症性ショックの重症患者607例(平均年齢64±15歳、女性33%)。メロペネム3gを24時間かけて持続投与する群(303例)と、同量を1日3回のボーラスにて間欠投与する群(304例)にランダムに割り付けた。盲検化のため、全例が両方の投与方法を経験するダブルダミー法を用いた。プラセボには0.9%塩化ナトリウム溶液を使用した。

 除外基準は、同意拒否、カルバペネム系抗菌薬による治療歴、Simplified Acute Physiology Score Ⅱで評価した低い生存確率(65点以上)、重度の免疫抑制(AIDSまたは長期ステロイド療法など)―とした。

 主要評価項目は、28日時点の全死亡と汎/広範囲薬剤耐性菌の出現の複合とし、両側χ2検定を用いてintention-to-treat解析を行った。

 副次評価項目は、28日時点の抗菌薬非投与日数、28日時点の集中治療室(ICU)退出日数、90日時点の全死亡などとした。

全評価項目で有意差なし

 全例が主要評価項目の解析に含まれ、90日間の追跡調査も完遂した。

 検討の結果、369例(61%)に敗血症性ショックが認められ、残りの238例(39%)には敗血症が認められた。入院からランダム化までの期間中央値は9日〔四分位範囲(IQR)3~17日〕、メロペネムによる治療期間の中央値は11日(同6~17日)だった。

 28日時点の全死亡と汎/広範囲薬剤耐性菌の出現は、持続投与群では142例(47%)、間欠投与群では149例(49%)に発生し、両群で有意差は認められなかった〔相対リスク(RR)0.96、95%CI 0.81〜1.13、P=0.60〕。

 28日時点の抗菌薬非投与日数の中央値は、持続投与群では3日(IQR 0~15日)、間欠投与群では2日(同0~15日)と両群で有意差はなかった(平均差0.4日、95%CI -0.9~1.7日、P=0.57)。また、28日時点のICU退出日数の中央値は両群とも0日(IQR 0~19日)で有意差はなかった(平均差0.6日、95%CI -1.0~2.2日、P=0.40)。

 90日時点の全死亡率は、持続投与群(303例中127例)、間欠投与群(304例中127例)ともに42%で、両群に有意差はなかった(RR 1.00、95%CI 0.83~1.21、P=0.97)。

 メロペネム投与に関連する発作やアレルギー反応などの有害事象は報告されなかった。

 以上から、Monti氏らは「敗血症の重症患者において、メロペネムの間欠投与に比べて持続投与による転帰の改善は認められなかった」と結論。その理由について「今回の研究では、対象患者における病原菌のMICが高いことが特徴であった。こうした患者特性により、これまでの研究結果と異なる結果になった可能性がある」と考察している。

(今手麻衣)