中国・Capital Medical UniversityのLongfei Wu氏らは、三七人参(サンシチニンジン)に含まれる成分サポニンから調製したXuesaitongソフトカプセルの虚血性脳卒中患者に対する有効性と安全性を検討する多施設共同二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験(RCT)を実施。その結果、Xuesaitongソフトカプセルは虚血脳卒中患者の機能的自立を促進する効果を有することが示されたとJAMA Netw Open2023; 6: e2317574)に報告した。

対象はNIHSSスコア4~15点の虚血性脳卒中患者3,072例

 三七人参やマメ科の植物に含まれるサポニンは古くから虚血性疾患の治療に用いられており、これまでの研究で神経保護作用が示唆されている。しかし、虚血性脳卒中患者に対する有効性のエビデンスは乏しい。

 Wu氏らは今回、サポニンから調製したXuesaitongソフトカプセルの虚血性脳卒中患者への有効性と安全性を検討するため、2018年7月1日〜20年6月30日に中国の三次医療機関67施設でRCTを実施した。

 対象は、18~75歳で米国立衛生研究所脳卒中スケール(NIHSS)スコアが4~15点かつmodified Rankin Scale(mRS)スコアが0~1の虚血性脳卒中患者3,072例。症状発現から14日以内に、Xuesaitong群(1,535例、120mgを1日2回経口投与)とプラセボ群(1,537例)に1:1でランダムに割り付け、3カ月間治療した。

 主な除外基準は、頭蓋内出血またはその他の非虚血性脳血管障害、動脈瘤急性冠症候群、サポニン禁忌とした。

 主要評価項目は3カ月後に機能的自立を達成した患者の割合。機能的自立の定義はmRSスコア2以下(0~1:障害なし、2~5:障害あり、6:死亡)とした。副次評価項目は、3カ月後および12カ月後の障害なしまたは軽度(mRSスコア1以下)の患者の割合、脳卒中再発率などとした。

複数の活性成分が相乗的な効果を発揮

 3,072例のうち、2,966例(96.5%)を修正intention-to-treat(ITT)集団に組み入れた〔年齢中央値62歳、四分位範囲(IQR)55〜68歳、男性66.8%〕。ベースライン時のNIHSSスコア中央値は5点(IQR 4〜7点)、静注血栓溶解療法は263例(8.9%)、機械的血栓除去術は18例(0.6%)が受けていた。

 解析の結果、3カ月後に機能的自立を達成(mRSスコア2以下)した患者の割合は、プラセボ群と比べ、Xuesaitong群で有意に多かった〔82.4% vs. 89.3%、オッズ比(OR)1.95、95%CI 1.56〜2.44、交互作用のP<0.001〕。

 障害なしまたは軽度(mRSスコア1以下)だった患者の割合は、3カ月後(69.3% vs. 74.1%、OR 1.27、95%CI 1.08〜1.49、P=0.004)、12カ月後(82.3% vs. 85.6%、同1.27、1.05〜1.53、P=0.01)のいずれもXuesaitong群で有意に多かった。

 脳卒中再発率は、3カ月後(プラセボ群1.1% vs. Xuesaitong群0.9%、P=0.58)、12カ月後(同2.8% vs. 2.2%、P=0.34)ともに有意差はなかった。

 3カ月間に発生した重篤な有害事象は、プラセボ群が1.1%、Xuesaitong群が1.0%で、有意差はなかった(P=0.85)。

 以上から、Wu氏は「Xuesaitongソフトカプセル3カ月投与は、虚血性脳卒中患者の機能的自立を有意に改善した」と結論。良好な結果が得られた理由について「三七人参に含まれるサポニンは複数の活性成分から構成されており、その点が他の神経保護薬と大きく異なる。こうしたサポニンのさまざまな活性成分が相乗的な効果を発揮したのではないか」と推察している。

(今手麻衣)