米・University of California, San DiegoのHaroutyun Joulfayan氏らは、関節リウマチ(RA)治療に使用されるTNFα阻害薬と乾癬リスクとの関連を米食品医薬品局(FDA)の大規模市販後調査(PMS)データを使って詳細に検討した。その結果、「メトトレキサート(MTX)との比較で、全てのTNFα阻害薬投与とほとんどの非TNFα阻害薬投与で乾癬リスクとの有意な関連が認められた」と述べ、中でも特に乾癬リスクが高いTNFα阻害薬も判明したことをSci Rep(2023; 13: 10448)に報告した。

RAのみを適応とする有害事象レポート66万報以上を抽出

 RA治療に用いられるTNFα阻害薬と乾癬の新規発症/増悪との関連については、これまでにも報告されている。TNFα阻害薬には尋常性乾癬(plaque psoriasis)の適応を有するものもあり、両者の関連は矛盾しているようにも感じられる。

 Joulfayan氏らは今回、FDAの有害事象報告システム(Adverse Event Reporting System)を用い、RAのみが適応症となっている薬剤の有害事象レポート66万3,922報を抽出し、それらをさらに単剤療法別に分類した。

 最終的にTNFα阻害薬では、セルトリズマブ(5,168報)、アダリムマブ(9,221報)、ゴリムマブ(2,899報)、インフリキシマブ(5,579報)、エタネルセプト(8万9,543報)、非TNFα阻害薬では、IL-6阻害薬トシリズマブ(4,819報)、T細胞刺激調整薬アバタセプト(7,574報)、抗CD20モノクローナル抗体リツキシマブ*(2,519報)、JAK阻害薬トファシチニブ(1万686報)の有害事象レポートを検討した。また、MTXの有害事象レポート(6,142報)を対照のデータセットとした。

 各レポートから乾癬の発症率を求め、報告オッズ比(ROR)を求めた。

トファシチニブのみ乾癬リスク上昇との関連見られず

 解析の結果、MTXに対する各TNFα阻害薬の乾癬発症のRORは、セルトリズマブ16.94(95%CI 7.86~36.50)、アダリムマブ10.29(同4.79~22.12)、ゴリムマブ6.09(同2.57~14.42)、インフリキシマブ4.56(同1.99~10.41)、エタネルセプト2.55(同1.20~5.41)。TNFα阻害薬全体コホートのMTXに対するRORは4.03(同1.91~8.49)となり、いずれも有意な関連を認めた。

 次に非TNFα阻害薬との乾癬発症RORをMTXとの比較で検討したところ、トシリズマブ5.31(95%CI 2.32~12.12)、アバタセプト4.63(同2.07~10.34)、リツキシマブ3.83(同1.48~9.88)については有意な関連を認めたが、トファシチニブだけはROR 1.98(95%CI 0.85~4.58)と有意な関連が示されなかった。非TNFα阻害薬全体コホートとMTXコホートとの比較では、ROR 3.58(95%CI 1.66~7.69)となった。

セルトリズマブコベルはどの薬剤より乾癬リスク高い

 さらに、セルトリズマブについては乾癬発症RORを他の薬剤と比べてペアごとに解析。対アダリムマブでは1.65(95%CI 1.25~2.17)、対ゴリムマブでは2.78(同1.72~4.51)、対トシリズマブでは3.19(同2.11~4.84)、対アバタセプトでは3.64(同2.52~5.27)、対インフリキシマブでは3.70(同2.44~5.61)、対リツキシマブでは4.41(同2.36~8.23)、対エタネルセプトでは6.64(同5.25~8.39)、対トファシチニブでは8.59(同5.49~13.44)、といずれの薬剤に対しても有意な乾癬リスクとの関連が示された。

 以上の結果を踏まえ、Joulfayan氏らは「MTX投与に比べ、全てのTNFα阻害薬投与が乾癬リスクと有意に関連しており、非TNFα阻害薬投与についてはトファシチニブのみが乾癬リスクと有意な関連を認めなかった。加えて、全ての薬剤投与と比べて、セルトリズマブは有意に高い乾癬リスクを示した」と結論している。

木本 治