中国・China-Japan Friendship HospitalのShanshan Li氏らは、抗メラノーマ分化関連遺伝子(MDA)5抗体陽性の皮膚筋炎患者にJAK阻害薬トファシチニブを投与した連続患者52例の実臨床データをJ Clin Rheumatol(2023; 29: 281-284)に報告。臨床的に有用だったことを明らかにした。

トファシチニブの可能性を示唆する報告が増えている

 抗MDA5抗体陽性の皮膚炎は、潰瘍性皮疹や軽度筋力低下を特徴とするまれな自己免疫疾患だが、急 速 進 行 性 間 質 性 肺 炎 (RP-ILD)併発例では特に予後不良である。難治性の同疾患に対する有望な治療選択肢として、トファシチニブの有用性を示唆する報告や発表が増えている(関連記事:「抗MDA5抗体皮膚筋炎にJAK阻害薬を上乗せ」)。

 Li氏らは2019年1月~22年6月にChina-Japan Friendship Hospitalで抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎患者〔欧州神経筋センター・国際ワークショップ2018で提案された基準(Neuromuscul Disord 2020;30:70-92)を満たした症例〕を登録。トファシチニブは適応外使用であるため、インフォームド・コンセントを得た上で治療を行った。

罹病期間6.5カ月、ILDは49例

 登録時の平均年齢は45±12.37歳(男性37例)で、罹病期間の中央値は6.5カ月(範囲3~13カ月)。疾患活動性は2人の医師によるvisual analog scale(VAS)を用いた全般的評価で4.13±1.41、患者によるVAS評価で4.62±1.55だった。

 皮膚症状は、ヘリオトロープ疹が36例、Vサインが18例、ショールサインが14例、Mechanic's hands(機械工の手)が16例、 Gottron丘疹が34例、 Gottronサインが23例、会陰紅斑が17例、皮膚潰瘍が13例、レイノー現象が1例、脱毛が10例に見られた。間質性肺炎(ILD)は49例(94.2%)に見られ、そのうちRP-ILDは6例だった。

 グルココルチコイド(GC)の平均用量は34.71±20.89mg/日だった。トファシチニブの用量は5mg(1日2回)で、18例はそれまで抗リウマチ薬(DMARD)の投与歴なし、残りの34例はトファシチニブの前に、従来型DMARDを投与していた。トファシチニブにスイッチした理由は、従来型DMARDに不耐が10例、従来型DMARDで再燃が24例だった。

 感染症に罹患していないことも登録時のスクリーニングで確認した。

VAS評価で有意な改善、感染症には注意が必要

 5例が脱落し、最終的に47例を7.81±6.21カ月追跡した。また3例は他のDMARDも併用した(タクロリムス、シクロスポリン、メトトレキサート各1例)。

 治療の結果、28例(59.6%)で臨床症状の改善が見られた。医師評価によるVASは4.04±1.10→1.82±1.30に、患者によるVASは4.50±1.11→1.82±1.27にそれぞれ有意に改善した(全てP<0.001)。さらに、GC用量も32.77±14.50mg/日→13.35±9.64mg/日へと有意に減少した(P<0.001)。18例はトファシチニブによる改善が認められず、他のDMARDにスイッチした。

 トファシチニブ治療中25例(53.2%)に合併症が見られ、内訳は19例が感染症、3例が縦隔気腫、2例が血栓(腕と下肢)、1例が肝不全だった。治療中の感染リスクに関連する因子を検討したところ、高齢とC反応性蛋白(CRP)が抽出された。一方、皮膚潰瘍を有する患者では感染リスクが低かった。

 以上の結果を踏まえ、Li氏らは「抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎に対する治療オプションとしてのトファシチニブの有用性が示された。治療中の感染症には注意が必要で、特に年齢とCRP値に留意すべきだ」と述べている。

木本 治