治療・予防

難病の小児特発性ネフローゼ症候群に光
新規治療法の開発進む 神戸大学医学部付属病院小児科診療科長 飯島一誠医師

 尿中にタンパク質が大量に漏れ出て、血液中のタンパク質の濃度が一定より低下した状態をネフローゼ症候群と言う。小児では毎年約1000人が新たに発症し、その約9割が原因不明の特発性ネフローゼ症候群だ。

まず、ステロイド治療を開始。効果の表れ方により治療法を選択

まず、ステロイド治療を開始。効果の表れ方により治療法を選択

 ▽治療反応性で病型分類

 小児特発性ネフローゼ症候群は、尿量の減少、むくみ、体重増加、腹水、腹痛、嘔吐(おうと)などの症状が表れて初めて気付くことが多い。組織を採取する腎生検は原則行わず、入院でステロイド治療を開始。効果の表れ方により病型分類して治療を進めていく。

 初回のステロイド治療が有効なタイプは80~90%を占める。そのうち、約20%は二度と再発しない。20~30%は初回の治療後、年1~2回の再発を何度か繰り返し完治に至る。治療終了後は毎朝、試験紙で尿をチェック。尿タンパク3+以上が3日続けば再発と判断し、すぐに病院で治療を受ける。「この段階なら症状が出ておらず、外来での治療が可能です」と神戸大学医学部付属病院小児科診療科長の飯島一誠医師は話す。

 2年間再発しなければ、以後、再発する可能性は低い。一方、ステロイドが有効でも、残り50~60%はステロイドの減量や中止に伴い頻回に再発を繰り返すタイプで、ステロイドの長期投与による副作用として特に成長障害(低身長)や骨粗しょう症が大きな問題となる。

 そこで、ステロイドが無効なタイプや頻回に再発を繰り返すタイプには、シクロスポリンなどの免疫抑制薬が用いられる。ステロイドが無効なタイプの80~90%で症状が治まり(寛解)、透析や移植が必要となる末期腎不全への進行を避けられる。しかし、シクロスポリンは腎機能への影響があるため長期投与が難しく、完治に至らぬまま成人となる難治患者が少なからずいるという。

 ▽普通の生活が可能

 近年、再発を繰り返す難治患者に対して、血液中のBリンパ球を排除するリツキシマブという薬の有効性が実証され、保険適用されている。それによりステロイドや免疫抑制薬の減量や中止が可能となったが、多くは一時的で、血液中のBリンパ球が増えれば再発する。

 そこで現在、リツキシマブ投与後の再発抑制を目指したミコフェノール酸モフェチルという薬の有効性と安全性を確認する臨床試験が進行中だという。他にも、難治のステロイド・免疫抑制薬無効患者へのリツキシマブとステロイドの大量点滴投与(パルス療法)などの臨床試験が進行中だ。

 飯島医師は「ステロイド治療中に塩分摂取を控える以外、食事制限や運動制限などの必要はありません。新たな治療法の登場で、回復できない副作用を起こさず、病気をコントロールできるようになっているので、普通に社会生活を送ってください」とアドバイスする。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)


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