関節リウマチと妊娠
治療続けて出産も
関節リウマチは、手足の関節に炎症が生じ、進行すると関節が破壊されて変形する病気だ。20~40歳代の女性に多い疾患のため、妊娠を希望する場合、妊娠中に治療をどうするかが課題となる。国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)周産期・母性診療センター母性内科の金子佳代子医師は「妊娠中は治療を継続できない、というのは誤解です。治療を続けながら、安全に出産することができる薬剤の選択肢は広がっています」と話す。
妊娠中に使用される関節リウマチの薬
▽生物学的製剤も使用可能
関節リウマチは女性に多く発症する自己免疫疾患で、半数以上が妊娠可能な20~40歳代で診断を受けている。治療には、基本薬として抗リウマチ薬のメトトレキサートを用いる。この薬は、症状の強さや進行の指標である疾患活動性を強力に低下させる一方で、胎児に奇形を生じる催奇形性や流産の危険性があるため、妊娠を希望する場合は、内服中止後少なくとも1月経周期(月経開始日~次の月経開始前日)が終了するまでは妊娠を避け、妊娠中も使用できるような他の薬剤に変更する。
選択肢となるのは少量のステロイド剤や抗リウマチ薬のサラゾスルファピリジン、免疫抑制薬のタクロリムスなどで、これらの薬剤で疾患活動性が低下しなければ、生物学的製剤の使用を検討する。生物学的製剤の中では、胎児への薬の移行リスクが低いエタネルセプトとセルトリズマブペゴルが使用可能だという。
妊娠後も薬物治療を継続する意義について金子医師は、「リウマチの疾患活動性が妊娠初期に高い母体は、早産しやすいことが海外で報告されています。治療を続けて、母体の体調を良好に維持することが、健康な赤ちゃんの出産につながると考えられます」と説明する。
▽妊娠中に薬をやめる選択も
とはいえ、「妊娠中はなるべく薬を飲みたくないという気持ちも尊重すべきでしょう」と金子医師。実は、リウマチ患者では妊娠中は疾患活動性が低下するという。そのため、妊娠前に徹底した治療を行って症状がほぼ消失する寛解を達成し、妊娠中は治療を中止して出産を乗り切るという方法もある。ただし、病状によっては急に薬をやめると、病気の急激な悪化が起こることもあるため、自己判断で薬をやめることはせず、事前に主治医に相談することが必要だ。
金子医師は「治療のために妊娠をあきらめたり、妊娠中だからと治療をやめて、無理に痛みを我慢するのではなく、患者さんの希望に沿った選択が可能であることを知ってほしい」と強調する。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)
(2019/03/23 07:30)